新興国市場、2018年押さえるべきリスク要因 ロシア・メキシコ・ベネズエラ…
[ロンドン 21日 ロイター] - 今年好調だった新興国市場は、来年も強い経済成長と金融緩和のメリットを享受し続けるはずだ。しかし投資家は、市場を不安定化させかねないイベントへの警戒感は緩めていない。
政治情勢や金融政策、債務不履行(デフォルト)などが新興国資産に打撃を与える危険がある要素だ。以下に来年重圧がかかる可能性があるポイントを、経済規模の順に国別に記した。
◎ロシア
プーチン大統領は来年3月の選挙で勝利するのは確実で、4期目の長期統治に入る。ただ2014年のウクライナ危機以降、ロシアと欧米の関係は冷え込んだままで、米国はロシア国債を対象とする新たな制裁も検討中だ。
こうした制裁が発動されれば、外国人投資家のロシア国債売却につながるかもしれない。ロシア国債の今年のリターンは約16%に達し、買い人気を集めていた。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)は、外国人によるロシア国債売りを来年のショックイベントになり得る要素の1つに挙げている。「(実現すれば)プレッシャーは大きくなりかねない」とみるBAMLは、ルーブルの急落と最大370億ドルの資金流出が起きると予想した。
◎メキシコ
来年7月の大統領選で、左派の野党候補マニエル・ロペス・オブラドール氏が勝利する確率がじりじりと高まりつつある。現在世論調査で優位に立っているからだ。ロペス・オブラドール氏は無駄な歳出を減らした分で福祉予算を増やす方針だが、投資家は歳出拡大と主要エネルギー改革の撤回を懸念している。
既にトランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱もあり得ると示唆している中で、米国との関係が悪化する恐れもある。ロペス・オブラドール氏は、「人種差別主義者や覇権主義的、ないし高飛車な態度」は許さないと発言している。メキシコは輸出の80%が米国向け。
ペソは今年7%上昇している。しかしインベステック・アセット・マネジメントのマイク・ハグマン氏は、政治情勢とNAFTA再交渉問題によって先行きは「基本的に不確実性が増している」と述べた上で、来年はメキシコ国債とペソへの逆風が強まると予想した。
◎ベネズエラ
期限が遅れがちではあっても返済を続けながら、一方で600億ドルの債務再編を目指しているベネズエラは来年、正念場を迎えるかもしれない。
マドゥロ大統領は来年の選挙を前に権力基盤強化に動き、国営石油会社PDVSAの幹部の多数を追放した。しかし同国の輸出の90%を石油収入が占めているにもかかわらず、こうした追放によってPDVSAは機能不全に陥っている。原油生産がさらに減少すれば、ベネズエラのデフォルトは早まるだろう。
ブルーベイ・アセット・マネジメントのアンソニー・ケトル氏は、債務再編がすぐに実現して経済が上向くとの見通しは今や「幻想」にほかならないと突き放した。
◎南アフリカ
元実業家のラマポーザ副大統領が与党・アフリカ民族会議(ANC)の新党首に選出されたことを、市場は大歓迎している。これでラマポーザ氏が次期大統領に就任する公算が非常に大きくなった。とはいえ、同氏にとって来年は大事な1年となり、2019年の選挙を控えて与党幹部や有権者の怒りを招かないように注意しながら、成長を上向かせ、雇用を創出し、財政赤字の穴埋めをしなければならない。
注目されるのは来春の予算とムーディーズによる格付けの検討だ。ムーディーズの判断次第で、南アフリカは投機的格付けに転落し、主要な債券指数から国債が除外される事態が生じかねない。そうなれば多額の資金が流出し、国債利回りが上昇するとともにランド相場が下げ圧力を受けるだろう。
パインブリッジ・インベストメンツのアンダース・フェーゲマン氏は「ラマポーザ氏が来年、構造改革に意味のある形で取り組めるかどうかは疑わしい。政治機能のまひは現実的なリスクだ」と指摘した。
◎ウクライナ
ウクライナは2014年の債務再編以降、国際通貨基金(IMF)から84億ドルの融資を確保し、景気後退からの脱却に役立っている。ただし追加支援を得られるかどうかは、年金制度や公益セクターの見直しを含めた改革の進展具合に左右される。
実際改革は停滞気味で、西側の支援国から警告を受け、欧州連合(EU)の1回分の融資は有効期限切れとなった。再編した債務の相当部分は2019年以降に満期が到来し始める以上、景気回復と投資家の信頼確保を維持することが重要になる。
モルガン・スタンレーは顧客に「来年は現政権にとって、IMFのプログラムが終了し、ウクライナが2019年の選挙シーズンに向かう前に改革への決意が試される最後の機会になる」と説明した。
◎レバノン
レバノンは来年5月、ほぼ10年ぶりの議会選挙を実施する。イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派国家イランの代理戦争の場となっているレバノンの政治情勢が、選挙で大きく変わる可能性もある。
強硬派が主導権を握っている今のサウジ政府がもしレバノンに経済制裁を科したり、労働者を国外追放することになれば、湾岸諸国への出稼ぎ労働者の送金に大きく依存するレバノン経済はかなりの打撃を受ける。経済の土台が揺らげば、今後はドルペッグ制を採用している通貨が緊迫した状況に陥る懸念がある。
ソシエテ・ジェネラルのアナリスト、レジス・シャテリエ氏は、レバノンは来年の格付け動向が注目されるとした上で「債務の対国内総生産(GDP)比率は日本と同じだが、巨額の経常赤字を抱えている」と話した。
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