「乳房と別れを告げた女性」が選んだ生き方 幸せを手に入れた矢先の「乳がん宣告」

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:1度はやはりがんって言われると、「死ぬのかな?」「家族どうしよう」「仕事どうしよう」と考えますよね、どんな方でも。ご家族はどうでしたか。

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川崎:夫は、「もし妻が死んじゃったら」というシミュレーションを1人でたくさんしたようで、前より……なんて言うんでしょうか、大人になったなというか……スイマセン、8歳年下なので、普段の上から目線が出てしまいましたけど(笑)。

私ががんになる前は、子どもが出ていって孫ができて、といった、普通の老後をモヤーッと描いていたみたいなんですけど、人生のシナリオが書き換えられるかもしれないと気づいて、夫も肝を冷やしたんでしょうね。今は一緒にスポーツクラブに入会して、ストレッチを教えてくれたり、マッサージをしてくれたりしています。

娘たちは、手術前後のときはナーバスになっていましたが、この1年、私の仕事ぶりも変わらないし、痛がってたり悩んでたりということもないので、今は以前と変わっていません。ギザギザしたおっぱいにも、乳首がないことにもすぐ慣れました。「えっ? ママのおっぱいって、ずっとそうじゃなかったっけ」ぐらいの。「違うわよ。あんたたち吸ってたやん」って。

「がん離婚」はありえるのか

――あるネットの記事で、妻ががんになったら浮気をする夫がいる、“がん離婚”が増えているという記事がありました。先生はいろいろなケースを見られていてどうですか?

:どうなんですかね。患者さん全員のアンケートを取ったわけではありませんが、あまり途中で離婚された方はいらっしゃらないですね。そのうち1人の離婚は、やはりがんが原因なのか気になってそれとなく理由を聞いたら、「実はモラハラがひどくて耐えていたけど、乳房再建もしたし、新しい自分になろうと思って別れてやりました!」という感じで前向きでした。

逆に、30代、40代前半ぐらいだと独身の方も結構多くて、まずはがんの治療が最優先ではありますが、術後、落ち着くと婚活や結婚、出産を気にされる方は多いですね。がんが理由かはわかりませんが、ずっと独身の方もいらっしゃれば、治療後結婚した方もいるので、結婚や離婚を決定する原因になるとは私は思いませんが。

川崎:結婚したあとに、「なんだ、こんな小っちゃいやつだったのか」「口だけの優しさだったのか」と気づいて離婚することがあるじゃないですか。最初から乳がんとわかって結婚したとなると、その男性の器の大きさや優しさがわかります。

乳がんだからモテるということはありませんが、たった1人の信頼できるパートナーを見つけるということであれば、逆にアドバンテージではないか、と私は思います。自分自身の変化を振り返っても、乳がんは決してマイナスな側面ばかりではないと実感しています。

安楽 由紀子 フリーランスライター

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あんらく ゆきこ / Yukiko Anraku

1973年、千葉県生まれ。国際基督教大学卒業後、編集プロダクションを経てフリーに。芸能人、スポーツ選手、企業家へのインタビューを多数行う。

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