「乳房と別れを告げた女性」が選んだ生き方 幸せを手に入れた矢先の「乳がん宣告」
川崎:スケジュールがいっぱいいっぱいで、手術前に入院して1日ぽっかり空いてる時間に「やっと眠れた」というくらい。それに、何日経ったら致命的になるかもわからない。なるべく早めがいいだろうと、漠然と素人考えであったので、先生から「全摘のほうが、再発率が低い」と提案されたらすぐ決めたという感じですね。
辻直子氏(以下、辻):私の患者さんにもパパッと決める方もいらっしゃるし、そうでない方もいらっしゃいます。病状的に「全摘」と言われると、もう悩む余地がないですよね。ただ、「全摘と温存、どちらでもいいよ」と言われると、選択肢がある分、悩まれる傾向にあります。また、再建するかどうか、再建するならどのような方法で行うかで悩む方も多いですね。
川崎:外科手術はやはりなるべく早いほうがいいんですか?
辻:乳がんは、最初のがん細胞が発生してから、検診でわかるようなしこりになるまでに10年ぐらいかかると言われています。したがって1、2カ月、急いでも変わらないというのが実情です。「手術枠がいっぱいなので、1カ月待ってください」と言われて皆さん不安に思われるんですけど、大勢には影響がない。ただ、がんが急に進行する時期もあるので、そういう場合は急いだほうがいいですね。
「乳がん」といっても症状はさまざま
川崎:じゃあ、私とがんはもう結構長い付き合いだったんですね。
辻:そうなんです。授乳中もすでにあったと思いますが、授乳には関係ありません。
川崎:転移というのは、なぜ起きるんですか?
辻:がんはどんどん増える細胞の塊なので、最初のうちは乳腺の中で増えるけれども、壁を越えて血管やリンパなどにがん細胞が食い込んでしまうと、あちこちに運ばれて定着してまた増える。これが転移です。全身を巡っても定着しなければ転移はありません。
川崎:私の場合、転移がなかったことが幸運でした。
辻:ただ、一定以上進行したがんは、転移がなくてももう全身を回っている「浸潤がん」という状態です。切って病理検査をすると浸潤がんかどうかわかるので、全身に対する薬の治療とかをすることが多いです。もちろん、全身回っていても転移せずに治ってしまう人もいる。
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