「時給30万円稼ぐ」という時代はやってくるか タイムバンクが狙う「個人の時間価値」の復権

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

たとえば、著名なインスタグラマーはフォロワーからたくさん質問が来るのですが、当然そうしたインフルエンサーは多忙です。質問を読んで、考えて答える。その10秒とか20秒という時間は、とても大きな価値を持っていました。しかし、それが今までは無料になってしまっていた。

――見過ごされていた時間の価値に、課金する手段ができたわけですね。11月からは、「ドラゴン桜2」の中に登場人物として出演できることをリワードとして、編集チームの時間(60分)が上場されました。人だけではなくサービスについても、秒単位で市場で取引されるようになる?

サービス産業の原価は人の時間、すなわち人件費です。チームの時間、組織の時間、会社の時間も、流動化して直接収益にした方が効率がよい。改めて考えてみると、あらゆるサービス産業のコストは時間で考えることができます。不動産などの場所、街の看板やウェブサイトのバナー広告、さらにはキャラクターのライセンスなども、期間を区切って使用するもの。今後はこういったものが持つ時間も、タイムバンクで扱っていく予定です。

タイムバンクは、個人の価値にフォーカスするというだけでなく、物も含めたあらゆるものの「時間の価値」を再構成することを目的にしています。ただ、価値といっても、今後は実用性以外の価値が大きく見直されるでしょう。これまでは「役に立つ」こと以外の価値が、相当割り引かれていた。

たとえば、ロケット事業がいい例です。正直言ってこれは短期的には儲からないので、経済的合理性を考えると投資をしてはいけない最たるものなのですが、私は投資してます。金銭的リターンではなくて、内面的、精神的リターンを求めているから。投資した中での経験や知識に価値を感じているわけです。

資本主義の次は「価値主義」の時代に

――著書の『お金2.0』でも、ポスト資本主義の思想として「価値主義」を提唱しています。新しい価値観がベースになる時代に、個人はどう生きるべきでしょうか。

佐藤航陽(さとう かつあき)/ 福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2011年にアプリ収益化事業を開始、世界8拠点に事業を拡大。2015年に東証マザーズに上場。累計100億円以上の資金調達を実施し、年商100億円以上のグローバル企業に成長させる。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務(撮影:田所 千代美)

「こうあるべき」という考え方自体、バイアスがかかってしまうので適切ではないと思います。人の心を打つには、感性が膜に覆われてしまうとダメ。心のサビを取り続け、裸の心を保ち続けることが大切。刀を研ぐイメージですね。

今後は「役に立つ」ためのあらゆるノウハウは、今後さらにコモディティ化することは避けられません。誰がやっても結果が変わらないというものが増えてくる中で、それでも「どうしてもこの人にやってほしい」と思われることが大事です。

突き詰めると最後に価値として残るのは、「この人と一緒にいると楽しい」とか「この人の将来は面白い」と感じさせる期待値や熱量といったものになるでしょうか。

――売る価値のある時間を持てる人は、必ずしも多くないかもしれません。今後、時間を売る側、買う側の比率はどれくらいになる?

それは2:8くらいが現実だと思います。ただ、売る側と買う側が交互に入れ替わる可能性があるので明確に分ける意味はなくなるでしょう。タイムバンクに限らず、新しい経済圏はこれからいくつも登場します。だから、個人は1つの経済圏でうまく行かなくても、新しい経済圏に移ればいい。

過去には、身分制度に縛られ、職業も結婚相手も自由に決められないことが当たり前と考えられていた時代がありました。それに比べて、現代は生まれた瞬間から運命が決まっているわけでなく、一応努力すれば何にでもなれるし、一緒にいる人も選べます。

それと同じように、次は自分が生きていく経済圏を選べるようになるはず。自分が上位になることを目指す場所を、自分で決める。結果として上位になれるかは別として、多くの人が自分にフィットした場所をどこかに見つけることができる世界が来ると思います。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事