ちなみに現在の入試でも、地元の大学進学志向は強い。大手予備校の入試担当者は「東京、大阪、名古屋など、大都市圏の受験生は大都市間を移動しますが、地方の受験生は基本的に地元の大学進学を望んでいる。大都市圏にある大学への進学は、地元に選択肢がなく、仕方なく進学している傾向があります」と言う。親の経済的事情で都会の大学に出せない問題もある。大都市間で受験生が移動しているのは、大都市には大手企業がたくさんあり、就職で支店や営業所など、地元の事業所に戻って来ることができると考えているからだろう。
さらには親に「子どもを手元に置いておきたい」考えが強いこともある。昔は子どもがたくさんいて、長子が家を継ぎ、他の子どもは都会に働きに出た。今は長子しかいない家庭も増え、都会に出ていく兄弟姉妹がいなくなっていることも、地元志向が強まっている理由とみられる。
合格者で見ると、この10年間で東京大学は、1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)からの合格者が47.4%から54%にアップ。一橋大学も51.2%から68.6%にまで増えている。早稲田大学、慶應義塾大学も6割から7割に増えている。地元志向の高まり、地元就職を望んでいることから、公務員人気がアップしていると見られる。
地方公務員は地元の有力な就職先だ
ランキングは、各大学が発表した、今年、「公務員就職者数」が多かった大学を並べた。「公務員実就職率」は、公務員就職者数を、卒業生数から大学院進学者数を引いた数で除した割合だ。さらに国家公務員と地方公務員の内訳も入れた。公務員には病院、非常勤講師、教員なども含む。
トップは日本大学で1028人だ。学生数が多いということもあるが、2位以下に大差をつけている。昨年の920人から108人の増加で4桁の大台に乗った。特に地方公務員922人は断トツの就職者数である。公務員に強い大学と言えるだろう。
2位は早稲田大学の638人。早稲田大は国家公務員就職者が150人で、その内訳は総合職が34人、一般職が57人だ。国家公務員試験は2012年度から、かつてのキャリア官僚を目指す国家公務員Ⅰ種試験が総合職試験に替わり、Ⅱ種試験が一般職試験に替わった。
実は公務員人気といっても、国家公務員の人気は下がっており、地方公務員を志望する学生が増えている。早稲田大の地方公務員の就職先は、東京都職員Ⅰ類が95人で、これは企業を含めた大学の就職者先のトップ3に入る。特別区(東京23区)職員も45人と多い。
3位は北海道教育大学の633人。国立大学ではトップで、公務員実就職率は56.4%と、5割を超える。小学校教員、中学校教員の順に多い。団塊の世代の大量退職で、大都市圏では教員不足がまだまだ続いており、教員採用が活発なことが影響している。
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