ヤバすぎる風俗の経営者が足を洗った事情 デリヘルドライバーを機に人生立て直し

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働いてみて、駒井はその店には自分がいたホテトルよりはるかに美人で、しかも素人っぽい女たちがこぞって応募してくることを知る。「なぜだろう?」と考えて、「そうか、脱がなくていいし客から体を触られないからだ」と気づいた。

ホテトルは本番がある。だから当然、客に裸を見せなければならないし、キスも愛撫もしなければならない。ところがビデオボックスは単に客の性器をしごくだけだ。女性は誰でも、見知らぬ男の前で裸になるのは抵抗がある。汚い中年男とキスしたり、触られたりするのも嫌だ。でもカネは欲しいから風俗に来るのだ。だから「脱がなくていい」「触られない」「客の性器を舐めなくていい」という3つの条件が整えば、いい女は自然に集まる。

若頭は1000万円融資してくれた。そこで駒井が始めたのはビデオボックスではなくオナニークラブ、通称・オナクラだった。客が自分でマスターベーションするところを、女の子に見てもらう風俗である。基本的に風俗嬢は何もしない。脱ぐこともない。着衣のまま、客がペニスをしごくのを眺めるだけだ。

一般の人には最もわかりにくい性風俗だろう。そんなことが商売になるのか?といぶかる人もいるはずだ。しかしこれが流行った。駒井の店も成功し、池袋、新宿、渋谷、秋葉原など、最終的には都内で6店舗を展開するに至る。

駒井は、まさに時代の波に乗ったのだ。時は2008年頃、「草食系男子」という言葉が巷(ちまた)を賑わせた頃だ。セックスに対してガツガツする男が減った。その傾向に不況とデフレスパイラルが拍車をかける。ソープランドやホテトルなど、高い料金を払って本番行為を求める男たちに代わり、安い料金で直接的な接触を避け、生身の女性をまるでグラビアやテレビ画面に写るAV女優やアイドルに見立てオナニーしたいという男が増えたのだ。

風俗嬢は各店に30人から40人。「サービスがソフトだから、女はいくらでも集まった」と駒井は語る。諸経費を引くと1店舗の売り上げが30万円前後。6店すべて合わせると最低でも1日150万円は売り上げた。

立て続けに摘発をくらう

「駒井さんは具体的にどういう仕事を?」と聞くと、「何も」と答えた。1店舗に店長1人の体制。他に従業員はナシ。店の掃除から売り上げの計算、嬢の面接まで店長にやらせた。

駒井はほとんど遊んで暮らした。ベンツのCクラスに乗り、グアムやフィジー、モルディブなど海外旅行へ頻繁に出かけ、月に数回は六本木へ繰り出しキャバクラで豪遊した。その際にはセカンドバッグに現金を入れ、ひと晩に平然と100万円以上使ったという。すべてがうまくいっているはずだった。ひとつ問題があるとしたら警察の摘発だった。しかし、それも駒井は切り抜けているつもりだった。

派手にやっていると当然目は付けられる。しかも駒井の店はヤクザの息がかかっていることもあり、無許可店だった。やがて6店舗のうち、1店舗、また1店舗と摘発を受けるようになる。その際、逮捕されるのは駒井ではなく店長だ。そのために、「従業員」ではなく「店長」にしているのだ。

釈放されたら別の店舗で「店長」にする。2度目まではそれでごまかせる。3度目以降はさすがに表には出せないので、仕方なくマネジャーというような肩書を与え、裏で働かせた。しかし摘発は止まらなかった。それまでは1店舗が摘発され、ほとぼりがさめて再開したところで別の店舗がというペースだったのが、2店、3店と立て続けに摘発をくらうようになった。

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