「断ったら、メールのレスが急にそっけなくなったんです。いつもラブラブモード全開って感じだったのに、『明日は予定どおり会いますか?』ってよそよそしい言葉遣いのメールが来て」
それでも翌日、予定変更はせず会うことにした。すると、待ち合わせの場所に現れた高村は、今までどおりの愛想よい彼だったのだが、なんと財布を持っていなかったという。
「今日は、大変だったよ。財布を家に忘れてきちゃってさ。だから昼飯も食べてないんだ」
「えっ!? じゃあ、ここまでどうやって来たの?」
「Suicaがあるから、電車には乗れた。それで会社にも行けたから、財布がカバンに入っていなかったのに気づかなかった。ああ、腹減った~」
高村が、「ガッツリ食事がしたい」と言うので、2人でステーキハウスに行ったという。
「結局その日の夕食代とホテル代は私が出しました」
「ええええ~、ホテルも行ったのぉ? ホテル代も出してあげたわけ?」
「だって、行きたいというから。で、帰ってきて、よくよく考えたら、保険に入ることを私が断った。だから、腹いせにわざと財布を忘れてきて、食事代、ホテル代を私に出させて、それで関係を終わりにしようとしているのではないかと思ったんですよね」
払う京香もどうかと思うが、自分が無一文なのにステーキをお腹いっぱい食べ、その後ホテルにまで行きたがる男というのは、いかがなものか!
もし京香の言うとおり、これで「交際終了」が来たら、デート代の半額は私がしっかり請求して取り返そう。冗談じゃない。
「払ったおカネのレシートは取ってある?」
「はい、お財布の中に入っていると思います」
「なくさないでね。それで、京香さんはどのくらいの確率で、彼を結婚詐欺師だと思うの?」
「99パーセント。もしこれを悪気なくやっていたとしたら、残り1パーセントは天然のバカですね」
「まずは、彼がどう出てくるか、2~3日、様子を見ましょう」
「どうしたの? なんでメールをくれないの?」
その夜から京香は、高村から来るメールにいっさい返信をしなくなった。翌日も朝、昼、夕方に来たメールを既読スルー。彼女の変化に高村は、慌てた。
「京ちゃん、どうしたの? なんでメールを返信してこないの?」
「僕が京ちゃんの何か気にさわることをした?」
「もしかして僕のことを嫌いになった?」
「このまま終わるのは嫌だから、とにかく会って一度話そうよ」
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