東京地検、「宿直勤務者」が2つの仰天不祥事 釈放すべきを釈放せず、拘留すべきを釈放

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「裁判所から電話で決定内容の連絡を受けていても、裁判所から決定書が届いたら改めてそれを読む。そんな基本的なことをなぜしなかったか。私も納得できない。皆さんになぜしなかったと聞かれても、理解してもらえる説明ができない」と山上次席検事は頭を抱える。「誠に恥ずかしながら基本中の基本を怠った。裁判所の決定の内容を誤解した。電話で受けた第一報の中身を誤解した挙句、後で送られてきた決定書をチラチラと見るだけでハイハイと処理したのだろう。そうとしか思えない」(山上検事)。

「自爆を恐れずに言えば」

9月に就任した甲斐行夫・東京地検検事正。就任したばかりとはいえ、地検トップの責任も問われかねない失態だった(撮影:尾形文繁)

東京地検は実は2件とも直接謝罪をしていない。1件目の被疑者には弁護人を通じて謝罪したという。1件目の事件はまだ捜査中であり、弁護士を通じて被疑者に東京地検の謝罪が伝えられたかどうかは定かではないという。2件目は身柄を確保した時点で、被告人に直接経緯を伝えたが、謝罪したかどうかは明言を避けた。

今回の不祥事に伴う処分は法務省が行う見込みだが、「監督者的立場の者と下っ端とでは責任が違う。当日の宿直勤務で一番上にいた検事の責任が一番重い。この検事は2件ともに関わっている」(山上次席検事)。当日の宿直勤務者の人数を何度聞かれても明言しなかったのは、「下っ端」の事務官の中には処分されない者がいるかもしれないからだろう。

再発防止策はどうするのか。ダブルチェックするためのチェックシートはあるものの、機能しないことがあることが今回の不祥事で明らかになった。山上次席検事は「適正に職務を遂行するために改めて指導を徹底し再発防止に取り組んでいく」とする一方、「自爆を恐れずに言えば、裁判所から届けられた決定書をきちんと読め、とまでチェックシートに書かなければいけないのか」とマニュアル整備による再発防止には現実問題として限界があることをほのめかした。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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