東京地検、「宿直勤務者」が2つの仰天不祥事 釈放すべきを釈放せず、拘留すべきを釈放
2件目はまったく逆のケースだ。勾留し続けるべき被告人の男性を誤って釈放した件だ。男性は傷害罪の被告人。この男性の弁護人から準抗告があったが、東京地裁はこれを却下。その決定を14日午後9時30分ごろに地裁から電話で聞いた宿直者が釈放の決定と勘違いした。地裁から届けられた準抗告却下の決定書をよく確認せずに同日午後10時53分に釈放した。
この被告人の身柄を確保したのは16日の午後2時45分。釈放から身柄確保までの39時間52分間、勾留すべき被告人を釈放していたことになる。この間に傷害事件を再犯したり、証拠隠滅を図ったりした事実は「承知していない」と山上秀明次席検事(東京地検のナンバーツーで広報を担当)は語る。
2つの不祥事はなぜ同日に起きたのか
山上次席検事によれば、1件目と2件目には何の関連性もない。1件目と2件目を取り違えた形跡はなく、釈放を勾留継続、勾留継続を釈放と取り違える正反対の不祥事が同日に起きたのは偶然なのだという。裁判所の決定を取り違える不祥事自体が珍しく、今年に入って初めてなのだそうだ。
釈放すべきなのに釈放しなかった1件目と、釈放すべきでないのに釈放した2件目とはどちらの罪が重いのか。山上次席検事は、「不当勾留は罪が深い」と即答したあと、「一般論として、社会に不安を与えるという点で、(勾留継続中の者を)釈放するのも罪が深い」と付け加えた。
それにしても、なぜ正反対の不祥事が同日に起きたのだろう。宿直は各部署からランダムに検事と事務官が選ばれる仕組みで、14日当日は特にイレギュラーなシフトではなかったという。宿直勤務者がパニックを起こすほど当日に事件が集中したわけでもない。裁判所から決定が伝えられた午後7時30分から同9時30分頃に宿直勤務者が寝ていたわけでもない。
「自ら追っている事件で忙しく、宿直業務がそっちのけだったのでは」という質問に山上次席検事は「宿直に専念する義務はあるが、自らの仕事を抱えて内職をしている者もいる。しかしそれとこれとは切り離して宿直業務に専念しなくてはいけない」と繰り返した。
一方で、「宿直のローテーションが固定化されていて、いつも同じメンバーだから気の緩みやなあなあの雰囲気があったのではないか。ろくにチェックしないのが常態化しているのではないか」との指摘には「ローテーションは固定化されておらず、したがっていつも同じメンバーではない。『私もチェックしていません』という声が次から次へと上がっているのなら別だが、そんな状況ではない」と明言した。
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