沖縄は中国と北朝鮮の脅威にさらされている 現地取材で考えさせられた「沖縄防衛」の課題

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空自への予算づけをめぐっては、「最新鋭の物はどうしても値段が張るので、数や取得のペースがどうしても伸びない」と述べた。

「尖閣周辺の海域にはなかなか近づけず、思うように漁ができなくなった」「尖閣周辺には行けない。外国船とのトラブルもあるし、場所も遠い。中国をあまり刺激しないようにしている」。八重山漁業協同組合に所属する漁師10人は、外国メディアを前に、次々と不満や悲鳴を上げた。

石垣島への陸自配備には地元で賛否両論

当時の石原慎太郎・東京都知事が主導した2012年の尖閣諸島国有化後、同諸島の領有権を主張する中国、台湾の船が周辺海域で活動をぐっと活発化させている。このため、八重山漁協の漁師たちは、中国公船と海保の巡視船がにらみ合いを続ける尖閣周辺の漁場に、行きたくとも行けない状況が続いている。特に、近海で台湾漁船の漁業活動が活発となっていることで、漁場が奪われていると指摘した。

地元では、尖閣諸島周辺で台湾漁船の操業を認めた日本と台湾の漁業協定が、沖縄の頭ごなしに台湾に譲りすぎる形で日本政府に取り決められたとの思いがある。政府は、尖閣の領有権問題で台湾、中国の連携を防ぐために、台湾に譲歩したとみられている。八重山漁協では国に見直しを求めている。

石垣市の中山義隆市長(筆者撮影)

石垣島で市民を真っ二つに割る大争点となっているのが、陸上自衛隊の配備問題だ。防衛省は南西諸島の防衛力強化のため、石垣島に警備部隊と、地対空ミサイル(SAM)と地対艦ミサイル(SSM)の部隊の隊員計500~600人の配備を計画する。中山義隆・石垣市長は部隊配備を受け入れる考えを表明している。

集会場に集まった八重山漁協の漁師たちに陸自の配備計画の是非を聞くと、賛否両論で意見が割れた。

八重山漁協マグロ船主会会長の田中博幸さんは「答えづらい。今、島の中では半々になっている。個人的には私は反対。子どもたちにとって、戦争がない環境をつくるのが役目だと思う。単純ではないが、話し合いで解決するなら、それがいちばんいい」と指摘。「海上自衛隊が海上に出ていけば、中国との軍事対立に発展することになる。向こうはやり返すからだ。そういうふうになると、私たちはお手上げになる」と述べた。

その一方、陸自配備に賛成の漁師は「(陸自配備は)戦いが前提ではなく、抑止力になる。何の備えもなくて、万が一来られた場合、そのまま支配される。沖縄は何度も支配ばかりされているから、もうそれが嫌になっている」と述べた。

沖縄を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなか、石垣市民の苦悩や葛藤がにじみ出た場面だった。日本の防衛をどうするのか。その地理的位置から、いや応なく国防の最前線になっている沖縄では、切実かつ重大な問題と化している。北朝鮮問題に隠れて、沖縄の問題を忘れてはならない。

高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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