京急が三崎口を「三崎マグロ駅」にした理由 「まぐろきっぷ」値上げしても大人気は続くか

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今年2月に運行した「みうら河津桜号」。車内で琴や尺八の演奏を聴きながら三浦半島へ向かう。参加者には「みさきまぐろきっぷ」が配られた(筆者撮影)

京急グループは2016~2020年度の中期経営計画で「都市近郊リゾート三浦の創生」をエリア戦略の重点テーマに掲げている。この数年、イベント列車などを通じ、改めて三浦半島への送客に力を入れてきた。河津桜が見頃を迎える時期には、琴や尺八の生演奏が走行中の車内で楽しめる「みうら河津桜号」を運行。昨年夏には水着のファッションショーを車内で繰り広げる「京急マーメイドトレイン」を走らせて話題を呼んだ。

一方、今年2月には三崎の産直センター「うらりマルシェ」との共同企画として、品川駅3番線に停めた電車の車内に海産物・野菜を並べた「京急うらりマルシェ号」を開催。三浦半島の魅力を発信しようと、あの手この手で取り組んでいる。

地域活性化のヒントになるか

沿線の活性化には地元の積極的な協力が不可欠だ。原田社長は10月5日の記念式典で、三浦半島の観光活性化に向けて「われわれもできるかぎりのことをやっていきたいが、三浦半島全体が連携していくことが非常に重要だ」と強調した。実際、オープントップバスの導入にあたっては「道路の脇に大きな木があったりして、三浦市や神奈川県、警察に協力をいただいてルートを確保した」(道平隆・常務取締役鉄道本部長)といい、行政の理解があってこそ実現できた。

式典に出席した三浦市の吉田英男市長は、まぐろきっぷについて「『電車賃タダ』くらいのサービス商品だと思う」と褒めちぎった。そのうえで、市内を走る路線バスを例に挙げて「(本来利用者の少ない)日中の時間帯でも多くのお客様に乗っていただいていると実感している」と需要掘り起こしの効果を指摘する。

鉄道会社と地元の店舗・施設、行政が連携して企画乗車券を盛り上げ、沿線外から人を呼び込むことで地域のにぎわい創出につなげる。鉄道利用人口の減少への対策が全国的な課題となるなか、まぐろきっぷの成功は沿線活性化策を検討するうえでのヒントになるのではないだろうか。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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