「首都圏大手私鉄」急行や快速の停車駅戦略 ほとんど1駅おきに停まる「急行」もある

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難題が多いのが京王電鉄である。昼間は特急中心のダイヤが急行・普通のみの運行となり、しかも列車本数が多いため、時間がかかる。現在、ラッシュ時に都心に向かう列車は、府中方面からの列車と橋本方面からの列車が合流する調布駅を1~3分おきに発車しており、下高井戸―明大前の混雑率は165%(7時40分~8時40分)となっている。

京王のネックは、列車本数の多い新宿寄りに追い抜きや接続のできる駅が少なく、しかも特急停車駅など利用者・停車本数の多い駅と必ずしも一致していない点だ。

調布―新宿間で追い抜きが可能なのはつつじヶ丘・八幡山・桜上水の3駅だが、この中に特急停車駅はなく、笹塚・明大前・千歳烏山・仙川といった利用の多い駅はいずれも列車の待避ができないため、停車時間の延びを吸収できる交互発着が不可能で、列車の遅れにもつながりやすい。特に、井の頭線との乗り換え駅である明大前は乗降が多く停車時間が長くなりがちで、次の列車が後ろで待っていることが多い。ここは特に改善が必要である。

京王では笹塚―仙川間の連続立体交差事業に取り組んでおり、2022年度には完成する予定である。これに合わせ、明大前と千歳烏山は2面4線の構造となり、駅の形としては交互発着ができるようになる。

ダイヤ改正で細かな改善を

停車駅のパターンは、どの鉄道も利用者の多い駅に優等列車を停車させ、そうではない駅は普通列車で対応するのが基本だ。しかし、一個人としての利用者からすると、「うちの駅は乗客が少ないから列車がなかなか来ないのも仕方ないよな」と考える人は少ないのではないだろうか。

乗車の機会はできるだけ均等であるべきだが、それをほぼ実現しているのが東武スカイツリーラインの複々線である。小田急もそれを実現しようとしている。だが、どこもそんな設備投資ができるわけではなく、工事には時間もかかる。

私鉄各社は、それぞれの実情に合わせて停車駅のパターンを作っている。抜本的な改善は難しくても、ダイヤ改正のたびに細かな改善を続けていってほしい。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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