神戸製鋼の「調査報告書」では何も解決しない 責任は現場に押し付け、原因究明も不十分

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結果的に品質責任も現場任せで、経営自らが責任を持って工場の諸問題を把握しようとする姿勢が不十分だったという。この経営管理構造が「工場で起きている問題について現場が声を上げられない、声を上げても仕方がないという閉鎖的な組織風土を生んだ」としている。

工場運営については、改ざんが最も多く発生しているアルミ・銅部門で顕著なように、「全社への十分な収益貢献を果たすことができず苦しんできた歴史的背景がうかがえる」。その結果、無理に受注したり、生産や納期を優先する風土が生まれたりした。そして、顧客のクレームがない限り、改ざんを許容する動機が醸成されたとする。

川崎氏は自らの経営責任は「最終的な対策をまとめた後に判断したい」とだけ述べた(撮影:風間仁一郎)

ほかに検査値の書き換えが可能な検査プロセスの問題や、「ものづくりに対する誤った自信、クレームを受けていないので数値を書き換えても問題はないという意識」があったとする。本社による品質監査が行われていなかったことなど、品質ガバナンス機能の弱さも指摘されている。

あくまで中間報告的な位置づけ

こうした問題を踏まえ、再発防止策として「品質はコストや納期に優先する」という価値観を「品質憲章」として定めるほか、「品質ガバナンス再構築検討委員会」を新設する。これまで事業部間での人事異動はほとんどなく、それが組織の硬直化につながっていたが、今後は人事ローテーションも積極的に進める。さらに、試験検査データの記録に関する自動化や、本社における品質監査の専門部も設置する。

ただ、今回の報告書はあくまで中間報告的な位置づけだ。年内をメドにまとめられる外部調査委の報告を踏まえて、最終的な再発防止策に反映していく方針。それらの諸施策の検討については、新設した品質ガバナンス再構築検討委員会が行うが、川崎氏自らが委員長となり「リーダーシップをとっていく」(川崎氏)。経営責任や改ざんに関与した社員の処分については、「最終的な対策をまとめた後に判断したい」(同)という。

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