こうした傾向について、「北朝鮮がミサイルを発射するとなぜ円高になるのか?」という質問を最近頻繁に受けるようになった。たしかに、日本に近い国が問題行動に出た場合に、リスクにさらされているはずの日本の「円」が買われるのには違和感を覚える投資家も多いだろう。
構造要因と市場心理による短期的な要因がある
筆者は主に、以下4つの要因があると考えている。
第1に、日本の国際収支構造が挙げられよう。日本は経常黒字国であることから、海外から得た利益を日本に戻す際に円買いが生じるため、これが恒常的に円高圧力となっている。一方、日本の投資マネーは海外に向かっているため金融収支は赤字で、これによる外貨買い・円売りが基本的には円安圧力となっている。
通常は、この経常黒字と金融収支赤字がバランスを保っているが、ひとたびリスクオフになると、海外に向かう投資マネーが細るため、このバランスが崩れ、もともとあった経常黒字による円高圧力のほうが強くなってしまうのだ。
第2に、さらに市場心理が悪化しリスクオフが進む際には、手元流動性を確保しようという理由から資産を現金化する動きとなりやすい。海外に投資していた株や債券などを売って資金を日本に戻す、いわゆるレパトリエーション(本国送還)の際には、海外から引き揚げた外貨が円転されるため、円高が一段と加速しやすい。
第3に、外国人投資家の動きも忘れてはならないだろう。市場がリスクオフに傾き、日本株の下落によって投資元本が減少すれば、外国人投資家にとってはその分の為替ヘッジは不要になる。したがって海外投資家が、不要となった円売りヘッジを解消し、円を買い戻す動きが一部で発生することも円高圧力となる。
第4に、投機筋の動きも挙げられよう。今や、「リスクオフ=円高」がほぼ公式のようになっているため、短期投機筋は反射的に株価が下落すると円を買う。それがプログラム売買にセットされていれば、機械的に株安とともに円買いが進むケースも多いだろう。こうした短期投機筋の動きも、リスクオフの際円高が進みやすい要因となっている。
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