西武S-TRAINは「観光列車」として使えるか

横浜―秩父2時間の旅、乗ってわかった問題点

もちろん、こうした理由もあろうが、西武グループの事業環境の変化に関しては、米投資ファンド「サーベラスグループ」の存在を抜きにしては語れない。今年8月10日付で、サーベラスが西武ホールディングス(HD)株式すべてを売却したニュースは、記憶に新しい。

西武グループとサーベラスのつながりは、11年半にもおよぶ。有価証券報告書虚偽記載問題で西武鉄道が上場廃止に追い込まれるなど、苦境に陥った西武グループに対し、2006年、サーベラスが、約1000億円を出資。その後、サーベラスがTOB(株式公開買い付け)を行い、経営再編を迫るなどし、2013年には、西武球団売却などとともに、鉄道に関しては多摩川線、山口線、国分寺線、多摩湖線と並んで秩父線の廃止も取りざたされた。

こうした圧力に対する必死の沿線活性化策が契機となり、沿線地域や観光客のみならず、西武グループ自身も、観光エリアとしての秩父の価値を”再発見”したというのが、近年の事業姿勢の変化の背景にあるのは間違いないだろう。

半年の運行で見えた課題

さて、西武グループの秩父に関連する事業は全体的にはうまくいっていると思われる中で、実際の利用状況などから今ひとつ定着していないのではと思われるのが、今年3月に運行開始したS-TRAINだ。西武鉄道広報部も「運行する時間帯によっては、まだ認知度が不足していると感じることがある」と認める。

今年3月に華々しくデビューしたS-TRAIN(撮影:今祥雄)

S-TRAINは、平日、土休日ともに運行されており、いずれも、全席指定(着席保証)で、複数の会社線を直通運転するのは変わりないが、運行区間が全く異なる。平日は、所沢駅から、東京メトロ有楽町線の豊洲駅までを結んでおり、西武線沿線から着席して通勤したいビジネスパーソンを主なターゲットとしている。一方、土休日は、西武秩父駅から西武鉄道、東京メトロ副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線を経由して、元町・中華街駅までを結んでおり、「西武線沿線から横浜エリアなどに、また、東急線沿線などから秩父エリアにそれぞれ往復しやすい時間帯に運行することで、新たな観光等の需要を創出することを目的としている」(西武鉄道広報部)という。

この新たな観光等の需要の創出については、現状、具体的に現れている事例として、「西武線沿線から横浜エリアへ多くのお客さまにご利用いただいております。とくに小さいお子さま連れのお客さまを目にすることが多く、新たな着席サービスを提供することで、小さいお子さまを連れて安心して遠出する機会を創出することができていると感じています」(西武鉄道広報部)といい、秩父以外の観光ニーズの掘り起こしについても、一定の成果を上げているという。

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