長期金利が東京五輪にも反応しないワケ 市場動向を読む(債券・金利)
さて、景気対策の大型化や歳出圧力は本来、金利上昇要因と捉えられる。政府による需要の大幅追加が国内需要の自律拡大を促し、潜在成長率上昇のきっかけになったり、国債増発が需給悪化懸念や財政規律の低下懸念を強めたりするからだ。ところが、長期金利はこれまでのところ低位安定を維持している。
東京五輪の経済効果、財政リスクともに市場は軽視
債券市場は、景気対策が旧来型の公共事業中心である限り、たとえ大型化しても潜在成長率の上昇にはつながらないという、バブル崩壊後の経験則を改めて思い起こしているのだろう。
また、財政リスクプレミアムに関しては、黒田日銀による異次元緩和が今後とも抑制に働くだろうと楽観視しているもよう。日銀が長期国債の大量購入を続ける限り、多少増発されても需給ひっ迫という大勢に変化はなく、需給悪化懸念や財政規律懸念による債券相場の下落、すなわち財政リスクプレミアムの拡大(による金利上昇)も未然に回避されるとの見方が支配的のようである。
ちなみに、この点は日銀の目論見どおり。黒田総裁は「毎月平均7兆円を超える大量の長期国債買い入れにより、リスクプレミアムの下押し効果がかなり働いており、今後も累積的に強まっていく」などと指摘し、自信を見せていた。
『2020東京五輪』の影響についても、債券市場は冷めた目で眺めている。確かに、五輪関連投資もしょせんはインフラ投資であり、本質は旧来型公共事業と大差はないと目される。また、五輪開催に伴う経済波及効果も、東京都などの試算によれば3兆円程度とわずかだ 。とすると、公共事業のやり方をPFI方式に「衣替え」するからといって、潜在成長率の押し上げ効果がどの程度アップするのかは未知数である。
こうみてくると、長期金利は上昇要因への「耐性」を備えており、今後とも低位安定を維持してゆく蓋然性が高いと言えそうだ。逆に言えば、「耐性」のバック・グラウンドとなっている『債券市場の期待潜在成長率の低迷』と『黒田日銀による異次元緩和』が転機を迎えるとき、長期金利は上昇局面入りする可能性が高まることになる。債券市場参加者のそれらを巡る期待の変化から目が離せない。
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