長期金利が東京五輪にも反応しないワケ 市場動向を読む(債券・金利)

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なお、安倍首相は10月1日、朝方に発表される9月調査分・日銀短観で足元の景気拡大基調を確認したうえで、今次消費増税を最終決断する予定である。政府はそれを号砲に大型経済対策を裏付ける今年度補正予算案の年内編成にとりかかり、年度内に国会で成立させ、執行する見通しだ。

もうひとつの金利上昇要因は“2020東京五輪”である。7日(日本時間8日早朝)にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年の五輪開催地が東京に決まった。

第4の矢・東京五輪で脱デフレ期待高まる?

経済財政諮問会議(議長;安倍首相)は早速、“2020東京五輪”をアベノミクス・第4の矢と位置づけ、「五輪を起爆剤として経済のグローバル化、輸送インフラの集中的な整備を加速することで、国際競争力も格段に強化される」と提言。

政府はそれを踏まえ、地域限定で大胆な規制緩和を行う「国家戦略特区」に東京を指定することを本格的に検討するという。そして、五輪関連の競技場や宿泊施設、道路などの整備に、民間の資金や経営ノウハウを導入する「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)方式」を積極的に活用できるようにする計画だ。

株式市場ではインフラ投資拡大の恩恵を直接的に受ける五輪関連銘柄が活況を呈し、相場全体を押し上げた。債券市場でも今後、49年前の前回の東京五輪が高度経済成長への起爆剤になったのと同様、56年ぶりとなる次回の東京五輪が脱ゼロ成長、脱デフレの足掛かりになるとの期待感が高まっていくかもしれない。

ところで、長期金利の理論値は、一般に「①均衡実質長期金利、②期待インフレ率、③リスクプレミアム」という3要因の和で定義されている。

これら概念のうち難しいのは、①均衡実質長期金利と③リスクプレミアムだろう。①は、実務的には「期待潜在成長率」が代理変数として用いられている。それは、経済成長の潜在力を表す潜在成長率に対する債券市場参加者の“期待値”。②の期待インフレ率も、文字どおり“期待値”である。

一方、③のリスクプレミアムは「理論値-(①+②)」で求められる。要するに①と②では説明しきれない、その他すべての要素を体現している数字だ。公債の償還可能性の高低を映す財政リスクプレミアムが代表例。このように①~③は市場の期待値によって規定されているので、実数の厳密な推計は事実上、不可能と言わざるをえない。ひいては、①~③の和としての長期金利・理論値あるいは適正金利もまた、およそのあたりをつけることはできても、小数点1位までといった数値を特定することは残念ながらできない。

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