北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か

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正恩氏は、北朝鮮が作り出すほんの少しの富でも軍事政権を支えられるよう多くの国民を貧困に陥れてきた――彼の父、祖父もそうした。正恩氏の究極の希望は、米国を朝鮮半島から退かせ、そこに韓国・北朝鮮の統一国家をつくり自分がその合法的な支配者に納まりたいというところではないか。

それを実現するために、国際社会ではナンバーワンではなく、「ナンバーツーの敵」となってきた。ナンバーワンになってしまえば、首をはねられてしまうからだ。「正恩氏はまったくもって理論的な人物で、彼にとって好ましくない境遇をうまく切り抜けてきた」と、グロッサーマン氏は話す。

「レッドライン問題」にするのは危険だ

一方、トランプ大統領も世間からの注目を好み、人を嘲笑し、何かを得るためには相手をいじめにかかる性質を持っている。正恩氏同様、予測不能なことをして、人を驚かせるタイプだ。今のトランプ大統領は、国民が共有するところの国益としての理念、価値観、軍事以外の説得方法(つまりソフトパワー)を独断で抑えつけ独り歩きしている。

トランプ大統領による、利益を得る者がいれば利益を失う者がいるという「ゼロサム」の攻撃的なリーダーシップ、多国間協調の軽視、過去に締結された協定からの脱退という行為は、同盟国を不安にさせている。

「トランプ大統領は、米国第一主義という公約を守るために本当に韓国や日本を犠牲にしてサンフランシスコを守るのではないか」と同盟国は考えているかもしれない。政策立案者たちがこのような疑問を持ち始めるということだけで、米国の友好的な地域の覇権、地域の安定の将来に暗い影が見え始めているということを意味する。

グロッサーマン氏は北朝鮮問題を 「レッドライン問題」にしてしまうことは間違いだと指摘する。日本と韓国は、何年もの間、北朝鮮に威嚇され続けてきた。米国本土攻撃の危機感を理由に「今行動あるのみ」と米国が息巻くのは、同盟国に米国との同盟関係を懸念する材料を与えるだけだという。「もし何かがわれわれを歯車から切り離し力を弱めてゆくとすれば、それはまさに同盟国との脆弱な関係だ」と同氏は話す。

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