北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か

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一方、正恩氏がおとなしくし続けることは考えがたい。おそらく同氏は核弾頭を表面的に利用しながら西の同盟国の絆を弱めようとするだろう。

たとえば韓国船を沈下させるなどというような小さめの挑発から始め、後に第3、第4の手段として海中核爆発を実行するなどして衝突緊張をしだいにエスカレートさせていくことも考えられる。そして米国はそのつど韓国、日本、そして自国のうち誰の利益を守るかの選択を迫られるのである。

北朝鮮に悩まされ続けてきた韓国政府は、軍事境界線から35マイル南に位置し、北の莫大に備蓄された従来兵器の射程距離に入っている。何百万人もの韓国人が攻撃対象のリスクとともに生活しているのだ。韓国政府は、北からの報復・先制攻撃を恐れ、米国は北朝鮮の挑発に対する態度を日本政府よりもトーンダウンすべきだと米国政府に要求してきてもおかしくない。

そこでトランプ大統領は、韓国政府と日本政府のどちらを守るかの二者択一を迫られるのである(もっともトランプ大統領が、日本と韓国の利益に少しでも関心があれば、の話だが)。

核不拡散条約が直面する新たな課題

グロッサーマン氏は、トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ。

「トランプ大統領が悪者に見える発言をするように仕掛け、日韓政府に不信感を抱かせる。さらに、中国にとっての道理が通らないパートナーになってもらい、米国が築いてきた世界における義務遂行能力、パワー、立場を弱めてもらう」(グロッサーマン氏)

かつては、米国の持つ「核の傘」がアジア太平洋地域の国々を守ってきたが、これからは各国が自国を、核兵器の脅威から守る努力をしなければならない日がくるかもしれない。核拡散防止条約が、真の狂人が爆弾を手にしたらどうするのか、という新たな課題に直面する日も遠くなさそうだ。

リチャード・ソロモン 経済ライター、Beacon Reports発行人

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Richard Solomon

英ロンドン・ビジネス・スクール卒。欧州のICT業界向けメディア、ESNメディアグループの発行を手掛けた後、来日。日本社会が抱える問題や日本のリーダーなどに関するメディアBeacon Reportsを発行。The Nikkei Asian ReviewやThe Japan Timesなどにも寄稿している。

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