300円のお通し、支払い時の小さくない疑問 居酒屋で乾杯!出てきた小鉢は断れるのか

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お通しは拒否できるのであろうか。一種の席料ととらえれば拒否できないが、料理の1つと考えれば拒否できるという法的解釈もある。ということは、そのお店が席料を取るような高級店かどうかでも判断が変わるだろう。そもそも、おもてなしの心、料理人の技を感じさせるようなお通しには不満を聞かない。不満の多くは一般サラリーマン、大学生が利用するような大衆店での価格に見合わないお通しの強制だろう。

私自身、お通しに納得いかなかった経験が2回ある。最初は、「ちょい飲みセット1000円」の広告につられて店に入ったときのこと。ビール1杯と料理2品で1000円とのことだったが、これにもお通しが出て会計は1400円近かった。

2回目は、夕食時に定食屋で800円の定食を頼んだときのことだ。食事をしはじめてから1杯飲みたくなって500円の生ビールを頼んだところお通しが出てきた。会計時にお通し代300円を取られ、結局1600円支払うことになり、高い食事代となった。

お通しがない飲食チェーンは人気だ

そもそも、利益確保のためのお通しの提供がビジネスとして通用しなくなっている面もあるだろう。たとえば、お通しを出さない均一・低価格が武器の「鳥貴族」は学生にも人気だ。業績も右肩上がりに伸ばしている。

居酒屋の鳥貴族だけでなく、牛丼チェーンを展開する吉野家は「吉呑み」を2013年から始めており、ハイデイ日高が展開するラーメンチェーン「日高屋」もサラリーマンの飲酒で売り上げを伸ばしている。先日、サイゼリヤに軽く飲みたいと思って足を運んだ。ワインがデカンタで200円(税込、以下同)、グラタンが399円、シェフサラダが299円でお会計は900円に満たなかった。これらの店舗ではお通しはない。居酒屋でビール500円、お通し400円だと、それだけでこの価格になる。

日本政府観光局によると、2017年1~9月の累計で前年同期比約18%増の2119万人まで訪日観光客数は増加しており、過去最速のペースだ。2020年までに政府は訪日観光客数を4000万人まで拡大することを目標として掲げている。

居酒屋でも数多くの外国人を見掛けるようになっており、今後もさらに増えることが見込まれる。お通しは日本独自のもので、その契約上の位置づけもあいまいであり、外国人客とトラブルになりかねない。高級店であれば、欧米でもクロスチャージやテーブルチャージの名目で席料を取られるので、日本でのお通しも一定の理解を得られるだろう。

一方で、大衆的な居酒屋には何らかの対応が必要に思う。とはいえ、法的規制対象を大衆的な居酒屋だけにするのも難しい。消費者が納得できるサービスとして支持されるためには議論の余地は大いにあるだろう。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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