「北朝鮮危機」こそが自民党圧勝の最大要因だ 英メディアは日本の総選挙をどう分析したか

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米テンプル大学アジア研究班のディレクターで、日本ウォッチャーとして著名なジェフ・キングストン氏は「政治の中心が右傾化する現在の日本」で、「熱烈に歓迎された」枝野幸男氏の立憲民主党の飛躍に注目する。「リベラリズムの指導者」となった枝野氏が党首を務める立憲民主党は「安倍首相の弱点を暴露する最適の位置」に陣取っているという。

しかし、安倍首相による憲法改正の夢は「現在は大きな支持を受けていないとしても」、法案を国会で可決させ、国民投票で大々的なPR作戦を駆使すれば、「かなうチャンスが高い」と結論付けた。

明治大学国際総合研究所の奥村準客員研究員は「大きな変化は見られない」と予想する。過半数議席維持は憲法改正法案の可決を容易にするが、「経済政策は今後も変わらないだろう」。安全保障の面でも日米関係、対北朝鮮は変わらない見込みだ。

上智大学の中野晃一教授は、「圧勝」だが安倍首相は信任が得られたわけではないという。小選挙区制のために「主要な政策に対する国民の意見と国会の議席の配置に大きなギャップがある」。投票率を見ても「自民党や安倍首相が大きな支持を得られたとは思えず、今回もまた、選挙制度による利点と分裂した野党勢力を追い風として勝利したことになる」。

憲法改正について「国民の意見は大きく分かれている」。改正のための国民投票で「過半数の支持を得られるかどうかは不明だ」。英国での欧州連合に加盟し続けるか離脱するかの国民投票でも、(残留を支持した)キャメロン前首相側が敗退したように、「国民投票で与党が思い通りにできるとは必ずしも言えないからだ」。

できることは「米国に忠誠心を示すこと」

北朝鮮問題はどうなるだろうか。勝利の見込みが確定した後で安倍首相は北朝鮮に毅然とした態度で対応すると述べている。しかし、BBCの東京特派員はこの表現は「レトリック(美辞麗句)に過ぎない」と指摘する(23日付、BBCニュース)。日本の国民の耳に心地よい表現だとしても、「実際に何を意味するのかが明確ではない」からだ。

日本は北朝鮮と外交関係を持っておらず、「北朝鮮に最も近い国である中国との関係もよくない」。安倍首相にできることは「日本の国防を強化し、米国に忠誠心を示すことしかない」。つまり、安倍首相が行えることは限られているのである。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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