ドイツの小学生が「デモの手順」を学ぶ理由 まず役所、次に地元紙、それでもダメなら?
ここで重要なのは、ドイツの小学生は身近な問題をどうやって社会的な議論に発展させるかを学んでいることだ。個人では解決できない問題があれば市が、それでも解決が難しければ州が、さらに連邦、EUへ。こういう解決の順位「補完性原理」がドイツの連邦制を支えているが、その構造の基本的なところを学ぶのである。
さらに、日本でいう中学校・高校にあたるギムナジウムでも政治教育は行われている。2017年8月25日配信の「街づくりは『役に立たない』文系教育が必要だ」 でもお伝えしたように、ギムナジウムで学ぶ倫理やドイツ語、歴史、経済、社会といった科目は、現在世界で起こっていることと関連付けて学ぶカリキュラムとなっている。
そのため、中学生に相当する学年の授業でも、教員が各政党の政策をコンパクトにまとめた雑誌の記事のコピーを前もって配布し、それを参考にしながらどの政党を選ぶか考える授業もある。これは歴史の教科での話だ。
また、各自治体で大々的に行われているのが投票権を持たない18歳未満の「子供・若者選挙」だ。「18歳未満の子供と若者の選挙イニシアティブ」が行うもので、若者や子供の市民教育と政治参加の促進のために1996年から始まった。各自治体が同組織に登録して、各自の学校やスポーツクラブ、図書館などで投票を行う。9月の連邦議会選挙では21万人の「18歳未満の市民」が投票した。
筆者が住むドイツ中南部のエアランゲン市(人口約10万人)でも行われ、地元紙の販売所が投票場所になった。連日選挙報道が紙面を埋めたが、「子供・若者選挙」についても、「若者のページ」を中心に関連記事が掲載された。
現代に生きるナチス時代の反省
政治教育に力が注がれている背景には、ナチス時代の反省が大きい。「子供・若者選挙イニシアティブ」の支援組織の1つ、連邦政治教育センターなどは書籍類をはじめ、ネット上でも政治教育のための教材を多数用意している。もちろん政治的には中立だ。
また、ドイツの政治教育には、「ボイテルスバッハ・コンセンサス」という大原則が1976年に作られている。同原則をわかりやすくまとめると、「生徒が自由に発言し政治的に成熟できるよう、教員が生徒を圧倒しないこと」「実際の政治で議論があることは、そのまま授業でも扱うこと」「生徒が自分の関心や利害をもとに政治参加できるよう、能力を取得させること」といった内容だ。
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