5兆円の借金が圧迫「仏高速鉄道TGV」の運命 仏独車両メーカー統合で今後の製造どうなる
これらを受けて9月5日、ボルヌ運輸相を中心とした「高速線計画に関する協議委員会」がパリで開かれた。プロジェクト推進派であるボルドー、トゥールーズの両市長など多数が出席し、国にとっては“厳しい時間”であったことが想像できる。そして、9月7日、環境移行・連帯省、トゥールーズ市は、それぞれの名義で同文のリリースを発表している。その内容は次のとおりだ。
「会合は、7月1日の大統領によるインフラ計画の優先事項を明確化するという発言を受け、行われた。会合の結果と、さらに優先事項も見極めたうえで、われわれは(プロジェクト実現に向け)協働を継続することに決定した」(途中抜粋)
マクロン大統領が挑む改革は、これだけにとどまらない。大統領は、セレモニーに向かう際に乗車したTGV車内で、SNCFの“変革”に関し、同社の十数人の社員と45分間のディスカッションも行った。
パリの車両基地に勤務する技術者、レンヌ支社に詰める管理職と幅広く招集され、大統領は、「これまで築いてきたビジネスモデル――SNCFの神話のようなものの上に、21世紀のSNCFを築くべきではない」と断じた。
そのほかにも、社員の身分規定、他社との競合、借金、そして、年金制度にまで踏み込み、その発言は多岐にわたった。SNCFのギヨーム・ペピ総裁も同席していたが、ペピ氏が驚きを隠すことはなかった。
“鉄道”の借金ではなく、“公共”の借金
SNCFの従業員の年金は、現在のフランス法令下で特別制度が適用される。ほぼ国有の形態をとる企業等に認められる制度で、運転士などの職種の社員は52歳から、内勤の社員は57歳から年金を受給できる。しかも、受給額は自身が最終的に受け取っていた最も高額な給与をベースに算出される。
マクロン大統領は、「われわれがこの問題を解決しなければ、その支払いをするのは、あなた方の子どもたちになるだろう。それは正しくない」と、この特別制度を廃止し、60歳から受給できる一般制度との統一を提案した。
さらに、増え続ける借金に対する大統領の矛先も鋭かった。2017年6月末で、鉄道ネットワークの資金調達から発生する国の借金は、440億ユーロ(約5兆7200億円)にまで達した。
「新たな借金を重ねることで、SNCFは社会に対し、どのような還元をすると約束できるのか。鉄道に関連する借金――そう呼ぶことを、やめなければいけない。これは、公共の借金だ。SNCFは、われわれとともに財政負担を軽減させ、現有インフラを改修する必要がある」
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