ホームドア「取り付け」は難しいわけではない 設置までの計画や準備に長い時間が必要だが

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電車からホームドアを積み下ろす作業(撮影:大澤誠)

ホームドアの取り付け作業が行われるのは、終電後から始発までの数時間。九段下駅発の終電が発車してから十数分後、西船橋方面行きのホームには、昼に車両基地でホームドアを積み込んだ15000系電車が滑り込んできた。

作業は午前1時過ぎに始まり、約50人の作業員が事前にホーム上に開けられた穴へと手際よくホームドアを取り付けていく。すべてのホームドアの固定を終え、輸送用の電車が走り去ったのは午前3時過ぎ。取り付け後の確認作業はあるものの、設置自体はわずか2時間ほどで完了した。

整備には時間もおカネもかかる

ホームドアをホームに固定する作業。事前に取り付け用の穴などは開けてあり、今回は準備に2カ月を要したという(撮影:大澤誠)

意外なほど素早く進むホームドアの取り付け工事。だが、重量のあるホームドアを設置するためには、ホームに補強などの準備が必要になるケースも多い。

九段下駅の場合は特に補強は不要だったというが、それでも準備を開始したのは取り付け作業の約2カ月前から。駅によっては半年近くを要する場合もあるという。さらに、設置したあとも機器の調整や乗務員の訓練などに一定の時間がかかる。コストも莫大だ。東京メトロによると、全路線にホームドアを整備するための費用は約602億円。これは機器のみで、関連の工事費用などは含まない額という。

利用者からすると、機器自体はあっという間に取り付けられている印象を受けるホームドアだが、実際には設置に向けた計画や事前の準備、さらに設置後の調整などに長い時間を費やしているわけだ。

ついに東西線にも取り付けが始まったホームドア。まだ設置が始まっていない半蔵門線、日比谷線もそれぞれ2017年度、2020年度には工事を開始し、今から約9年後の2025年度末には全179駅に完備される予定だ。「(東西線初の設置を終えて)感無量ですが一段落ではないですね。今後も工程を精査して1日でも早く設置していきたい」と井上さん。今後しばらくの間は、いつも乗り降りする地下鉄の駅に前日までなかったホームドアが設置されていたり、車内にホームドアを積んだ電車を目撃したり……といったことが増えていくかもしれない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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