アルプス電気、iPhoneカメラ中核部品の実力 5年で売上高3割増、アップルが認めた高品質

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ただ、iPhoneのデュアルカメラだけに頼っていては一層の成長を見込みづらい。今後、アクチュエーターの成長の原動力は何になるのか。考えられる搭載先は3つある。

まず、スマホのフロントカメラにはアクチュエーターそのものがついていない。SNSへの写真投稿などのために自撮りをする人の需要は大きく、アクチュエーターの搭載が増える可能性はある。

2つ目は「iPad」だ。このシリーズで光学手ぶれ補正機能があるのはiPad Proのみ。廉価モデルにはオートフォーカス機能しか搭載されていないため、今後手ぶれ補正が広がっていくかもしれない。

アルプスは中国スマホ向けで稼げるか

最も潜在力が大きいのが3つ目、中国メーカー製のスマホだ。アルプス電気はiPhone向けのアクチュエーターでシェアが高い一方、性能向上が昨今著しい中国スマホ向けではTDKやミネベアミツミの後塵を拝している。

(出所)IDC

アルプス電気が中国スマホへアクチュエーターを供給し始めたのは3年前のこと。すでに競合2社は中国市場で存在感を発揮していた。アルプス電気は、世界シェア9%の華為技術(ファーウェイ)向けに今年からアクチュエーターの納入を始め、中国スマホへの足掛かりにしたい考えだ。

アクチュエーターの次なる成長のため、投資のアクセルも踏む。

2018年2月には、中国・無錫工場で14億円をかけた新工場棟が完成する。日本国内でも、100億円を投資する宮城・古川工場の新工場棟が竣工となる。いずれもモバイル機器と車載向け製品を生産するとしており、アクチュエーターも対象になるとみられる。

前出のモルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤アナリストは「(生産能力が引き上げられることで)これまでとは異なり、iPhone以外にもリソースを分散できる状況になりつつある。中国市場でもシェアを上昇させるチャンスだ」と分析する。

アルプス電気は”リンゴ”に次ぐ果実をもぎ取れるか。その本気度が試されている。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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