ステップワゴンがHVをスパーダに限ったワケ ホンダのかつての「ドル箱」は苦戦を脱せるか
ステップワゴンは追われる存在だったはずが、いつのまにかトヨタや日産に抜かれてしまった。特に5代目が苦戦している大きな要因がハイブリッド車の不在だった。ホンダはトヨタには及ばないものの、もともとコンパクトカーから上級車まで、ハイブリッド車を積極的にラインナップしてきたメーカー。にもかかわらず、5代目ステップワゴンは当初、排気量1.5Lターボエンジン1本だった。個人的には力強く静かなターボエンジンの加速には好感を抱いたものの、競合車種と比較検討するユーザーの多くがソッポを向いた。
筆者は昨年のゴールデンウイーク明けに行われた、ステップワゴンの報道向け試乗会で、開発者からこんな話を聞いている。彼によれば、ステップワゴンが属する5ナンバー2リッタークラスの背高ミニバンでは、奥様方の井戸端会議が売れ行きに大きな影響を持つという。予想どおり、購入の主導権を握っているのは奥様方だった。近所の公園などでの井戸端会議で、意外にも車談義がしばしば行われるそうだ。
スタイリングやハンドリングが話題に上ることはほとんどない。メインテーマは価格と燃費と使い勝手だ。多くの家庭で同じクラスのミニバンを所有し、子供たちのスポーツの試合などのときに、交代で出動するのだという。
「好きな車を買えばいいのに」と思う人もいるだろう。しかし周囲に合わせた行動を取らないと、仲間外れにされてしまう可能性もあるのが、今の日本社会のよからぬ傾向であることもまた事実である。奥様が購入の主導権を握ると聞いたので、ハイブリッド車がないと苦戦しそうだと予想したら、そのとおりになってしまった。
ホンダもこれは弱点だと感じていたのだろう。ハイブリッド車の追加は今回のマイナーチェンジで目玉の1つといえる。
スパーダに限定した理由
それにしても、なぜ当初からステップワゴンにはハイブリッド車が設定されなかったのか。派生モデルのスパーダにのみ設定されたことが、その事情を物語っている。
ホンダは現在複数タイプのハイブリッドシステムを持っている。「フィット」や「フリード」に積まれている排気量1.5L直列4気筒エンジン+1モーター、「アコード」や「オデッセイ」が積む排気量2L直列4気筒エンジン+2モーター、「レジェンド」や「NSX」向けの排気量3.5L・ V型6気筒エンジン+3モーターという陣容だ。このうち3モーター式はレジェンドとNSXとではエンジンが別物で搭載位置も異なるから、4タイプとしたほうがいいかもしれない。
ステップワゴン スパーダに追加設定されたのは、2Lエンジン+2モーターのハイブリッドシステムである。
マイナーチェンジで投入するとなると、さまざまなテストを行わなければならず、新規開発では間に合わない。3.5Lエンジン+3モーターは過剰にすぎるし搭載スペースがない。なのでステップワゴン・ハイブリッドの実現は、1.5Lエンジン+3モーターか2Lエンジン+2モーターかいずれかの転用になる。
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