CO2排出ゼロを目指す、太陽光発電は小さな一歩−−宮原耕治・日本郵船社長
-- 今回、運搬船に搭載する太陽光発電は40キロワットと船全体で1%の省エネにもならないが。
40キロワットは導入当初の試験的な発電量。社内では5%をターゲットにしてやれないかと言っている。デッキに太陽光パネルを張る余地は広大だし、パネルの技術革新が進めばもっと省エネ比率が高まる。船の小型・スリム化や電子制御エンジンの改良を含めて2010年までに従来比50%の省エネを実現する。10年には船底と海水の間に空気を送り込んで摩擦抵抗を低減する新技術も実用段階に入る。
-- CO2削減技術に6年で700億円投じるが費用対効果は。
12月に竣工する新船の太陽光発電システムは明らかに費用のほうが高い。だがこれは次のステップに進む必要経費だ。一方で電子制御エンジンは費用対効果ですでにお釣りが出ている。6年ですべて回収するのではなく10年、20年先を見据えた施策だ。長年の取引先との関係強化の意味合いもある。荷主のトヨタ自動車からも「サポートする」という心強い言葉をいただいている。共同開発相手の新日本石油は日本郵船の大荷主で、燃油の大供給者でもある。
-- 新日石にとって燃油販売量が減るのでおいしい話ではない。
新日石の現在のメインビジネスは油を売ることだが、新日石の方針は明快。化石燃料に頼るビジネスだけではやっていけない。だから代替エネルギーに取り組んでおられる。そこで今回、当社と組むことになった。
-- 2050年にCO2排出量ゼロという遠大な計画を打ち出した。
20年には動力の半分を従来のディーゼル発電以外にする。太陽光発電に風力発電、燃料電池、バッテリーを組み合わせて50年にはゼロ・エミッションを実現する。
-- 不況になるとCO2削減努力をする余裕がなくなるのでは。
海運の好不況にかかわらずCO2削減努力を続ける決意でいる。海運を取り巻く課題は四つのC。一つ目がコスト。海運ブームの裏で船員費が1年で2割上がっている。二つ目はクレジット。世界経済の信用収縮はつねに半年から1年遅れて海運業に現れてくる。三つ目がカレンシー。海運は85%がドル建てだから、いつドル安の大波にさらわれるか分からない。そして四つ目がCO2。このCO2の問題は放っておくと誰かが規制を決めてしまうが、そうなる前に自主努力をしておかないと手遅れになる。これら四つのCはどれ一つ取っても生易しい問題ではない。しかも、満遍なく目を光らせて手を打っておかないと、2~3年はいいとしても、5年、10年先にウチの会社が生き残れるかどうかわからない。そんな危機感を持っている。
みやはら・こうじ
1945年岡山県生まれ。70年東大法卒、日本郵船入社。83年ロンドン支店勤務。96年経営企画グループ長。99年定航調整グループ長。2000年6月取締役、02年常務、03年専務、04年社長。
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