ヤクルト真中監督が退任を決めた本当の理由 「誰がやっても勝てない」という意味ではない
退任を決意した決定的な理由は、「ライアン」こと、小川泰弘のクローザー転向でした。先発ローテーションの一角でもあった小川は、今季途中に背中の張りを訴え、一時期、戦線離脱しました。そして、6月末にようやく復調の兆しが見え、一軍に復帰する際に、僕は小川にクローザー転向を指示しました。この時点ですでにチームは低迷状態にあり、イヤな流れを変えるための「現状打破の起爆剤」として、大きな賭けに出たのです。それは、大げさではなく、監督生命を賭けたものでした。
クローザー転向は失敗
しかし、結果的に小川のクローザー転向は失敗に終わりました。もちろん、その責任は小川にあるわけではありません。すべてが指揮官である僕の責任です。当初、「打てる手は打った」と決意していたものの、結果的にうまくいかなかったことで、「これから何をすればいいのか?」と、正直なところ行き詰まりを感じていました。まさに、この時点が僕の監督としての分岐点となりました。
たとえば、チームを率いる最高責任者として、「今季はダメだったけれども、来季はこうしよう」というヴィジョンが持てるのであれば、僕は「来季も監督続投を」と望んだかもしれません。しかし、自分の中で「もう手詰まりだ」と感じている以上、このまま監督を続けることはチームに迷惑がかかるし、ファンのみなさまに対しても失礼です。そして、僕自身も何をしていいのかわからない状態では、来季もまた同じ過ちを繰り返すことになりかねません。
前述したように、監督退任は7月にはすでに決意していましたが、この間、僕は一度も「途中休養」を考えたことはありませんでした。もちろん、連敗中には「もう辞めたい」と思うことも、確かにありました。けれども、おごった言い方になるかもしれませんが、本音の部分では「ここで監督が代わったとしても、チームの状況は大きくは変わらないだろう」と思っていました。それでは、代行監督に迷惑がかかるだけですし、繰り返しになりますが、選手たちに「最後まであきらめるな」と言っている以上、途中で僕が辞めるわけにはいかなかったのです。
理想としては後半戦にチームは勢いを取り戻し、Aクラスを確保し、クライマックスシリーズに出場した後に、「それでは辞めさせていただきます」となればまだ格好もついたかもしれませんが、現実はそんなに甘くありませんでした。後半戦も失速したまま、チームは3年ぶりの最下位に沈み、本当にファンの方々に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
退任報道の際に、「来年続けたとしても、勝てる自信がないから辞める」という報道がなされました。しかし、この言い方は正確ではなく、誤解を招くかもしれないので、きちんとこの場でご説明させてください。正確に言えば、「真中満がこのまま監督を続けたとしても、勝てる自信がない」という意味であり、「今のチーム状況ならば、誰が監督になっても勝てない」という意味では決してありません。別の方が監督となったならば、劇的にチームを変えることができるかもしれませんし、そうなってほしいと願っています。