京急「赤い2階建て」は、三浦半島観光の目玉だ 「まぐろきっぷ」とともに活性化の起爆剤に

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「電車そっくり」にこだわったという車内のステッカー。上は「車号銘版」、下は携帯電話のマナー呼びかけと、オリジナルデザインの「自撮り棒禁止」(記者撮影)

三浦半島は、神奈川県内でもいち早く人口減少と高齢化が進んでいる地域として知られる。横須賀市は1992年の約43万5000人、三浦市は1994年の約5万4000人をピークに、2017年9月1日時点の推計人口は横須賀市が約40万1000人、三浦市が約4万4000人まで減少。三浦市の統計によると、1990年度に1万5365人だった京急線三浦海岸駅の1日平均利用者数も、2015年度には1万1701人に減った。

そこで重要となるのが、観光客の誘致による活性化だ。

三浦市の統計によると、1990年には年間600万人を超えていた来遊観光客数は、一時期は500万人台前半や400万人台後半まで減っていたものの、2015年には591万人まで再び増加した。考えられる要因として同市は、市によるシティセールスの推進や、三浦半島と城ヶ島が2013年に旅行ガイドブック「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で二つ星を獲得し注目を集めたこと、貴重な自然環境が残る「小網代の森」が2014年に一般開放されたことなどに加え、京急が販売する企画乗車券の好調を挙げる。

広がるか「まぐろきっぷ」効果

京急が各種販売する企画乗車券の中でも特に人気を呼んでいるのは、2009年に発売を開始した「みさきまぐろきっぷ」。マグロ料理やレジャー施設の利用とバスのフリー乗車券、鉄道の往復をセットにした商品だ。京急によると2016年度は約15万7000枚を販売し、今年度はすでにこの枚数に迫る勢いだという。

先に挙げた来遊観光客数の統計は観光地・観光施設別の訪問者数を集計しているため、実際の観光客数より数字が大きく出る傾向はあるというものの、ピンポイントで特定の目的地を訪れるだけでなく、複数のスポットを訪れる人が増えたとみることができる。三浦市は観光客数に占める「まぐろきっぷ」利用者数については具体的に把握はできないというが、市内の飲食店や各種レジャー施設利用券を含む同きっぷは、回遊客の増加にも貢献している可能性が高そうだ。

三浦半島は京急沿線有数の観光地。1998年の空港線羽田空港ターミナル乗り入れ以後は羽田空港アクセス関連のPRが目立っていた京急だが、2016~2020年度の中期経営計画では「都市近郊リゾート三浦の創生」を掲げており、グループとして三浦半島の活性化に注力する姿勢を示している。

「まぐろきっぷ」が人気を集める中に登場する京急の「赤い2階建て車」。バスの前面に描かれた「けいきゅん」の笑顔のような好結果を三浦半島にもたらすだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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