年5000万円赤字の割烹を再興した女将の改革

立ち塞がる義父の先代を緻密に納得させた

メニュー名を変えただけで効果は絶大だった

公衆電話1台の撤去すら許してくれない義父・孝行さんに、何度も説得を繰り返し、ようやく了承してもらえた。すると、これが見事に大当たりし女性客が倍増した。これまで1日平均3食だったが、10倍の30食を売り上げた。

義父・孝行さんからの信用を少し勝ち取った祐子さん次に手をつけたのが、2400円という従業員の高すぎる時給だ。

「『日本橋界隈の同じ業態の時給を調べて今の時代はこの金額ですよ』とお伝えしました。『あ〜そうなんだね〜。任せるよ』ということで(孝行さんの了承を得たので)、その金額に変えました」(祐子さん)

それでも立ちはだかる義父を説き伏せた隠し技

義父・孝行さんと従業員に粘り強く交渉した結果、高すぎた時給を1200円ほどに下げてもらった。しかし、この程度では年間5000万円の赤字は解消できない。改めて提案したのが店舗の全面リニューアルだ。目指すは、これまでの「や満登」の良さを生かしながら、常連さんだけでなく若い方にも来て頂ける“和モダン”雰囲気だったが、またも義父・孝行さんが立ちはだかった。

「私の目の黒いうちは、勝手なことはさせない」(孝行さん)

祐子さんは経営者として鍛えられた才覚をいかんなく発揮した

悩んだ祐子さんはあることを思いついた。それは義父・孝行さんと初めて会ったお見合いの日に聞いた「東京に7つしかない麒麟像を持っている」という話だ。

「『お義父さんが大切にしているものを展示させてもらって美術館のような日本料理屋、和モダンをテーマに作り上げていきたい』ってお話をさせていただきました」(祐子さん)

押し入れにしまわれていた麒麟像をリニューアルの目玉として店の入り口に飾る事を提案したのだ。新しいことだけでなく自分たちの伝統を守ってくれると分かった義父・孝行さんは、ついに首を縦に振った。

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