年5000万円赤字の割烹を再興した女将の改革 立ち塞がる義父の先代を緻密に納得させた
「ショック過ぎるというか悲鳴を上げました。えー!って。一体何やってるんだろうっていうのは、日々怒りに変わってきて。こんなことしている場合じゃないでしょって思いました」(祐子さん)
お店の改革に着手しようとした祐子さんだったが、義父の孝行さんが最大の障壁となった。
「結婚して社長はうちの旦那さんに譲ってくださるということだったのですが、依然変わらず義父が差配しておりました。何でもお義父さんにお伺いを立てなきゃいけなかった。全て」(祐子さん)
店の中にありながら、誰も使っていない1台の公衆電話を撤去しようとした時ですら、「1人ここに電話をくれるお客さんがいるんだよ。私の目の黒いうちは、このままにしといてくれ」(孝行さん)と拒否されたほどだ。
「もう1つ電話があるんだからその電話番号をお伝えすれば良いだけじゃないかと思いました」(祐子さん)
メニューはここ数十年変えておらず、店内も古めかしいまま。祐子さんは再三、店舗のリニューアルを提案したが義父・孝行さんは全く聞く耳を持たない。困り果てた祐子さんは夫・英行さんに相談するが、「俺の言うことは聞き入れてくれない」(英行さん)。祐子さんはただただ、老舗ならではのルールに戸惑うしかなかった。
先代を納得させた新米女将の大作戦!
社長に就任したばかりの夫・英行さんは、これまで料理一筋だったため、経営面は社長経験のある祐子さんが担うことに。課題は数十年も変わってないメニューや内装を一新して「や満登」を生まれ変わらせることだった。
「メラメラ闘志が湧いて何が何でも立て直そうっていう気合が入りましたね」(祐子さん)
とにかく、いまだ決定権を持っている義父・孝行さんに信用してもらわなければ、自分の改革は何もできない。祐子さんはまずハードルの低そうなメニュー名の変更から着手した。
目をつけたのは1日平均3食しか出なかった「飛騨ステーキ丼」。味は美味しいのになぜか全然人気が出ない。そこで祐子さんが考えたメニュー名が「飛騨牛“焦がし醤油”ステーキ丼」だ。
「ステーキ丼を食べさせてもらったときにお醤油の焦げた風味が、食べた瞬間に鼻から抜けたんです。日本料理屋ならではのお醤油の風味と飛騨牛の油がものすごくあって“焦がしじょうゆ”は絶対入れたいと思いました。“焦がし醤油”とつけたほうが味を想像しやすいんです」(祐子さん)
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