年5000万円赤字の割烹を再興した女将の改革 立ち塞がる義父の先代を緻密に納得させた

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これ以降、祐子さんは英行さんから猛アプローチを受けることに。最初は全くなびかなかった祐子さんだが出会ってから半年後のある日のこと、祐子さん宅のチャイムが鳴った。突然の来訪者が現れたとドアを開けると、そこには、板前姿の英行さんの姿があった。

「いろいろ持って来ちゃいました」(英行さん)

成川英行さんは老舗割烹の4代目として若いときから料理の腕を磨いてきた

驚く祐子さんを尻目に突然料理を作り始める英行さん。この行動には目的があったそうだ。

「僕は、こんな見てくれで祐子さんの周りの男性みたいに気の利いた会話もできない。できるのは料理を通して、祐子さんやお客さんを幸せな気分にすること。これが僕の仕事です」(英行さん)

英行さんが作ったのは、お店の秘伝のつゆを使った「親子丼」。口下手な彼は料理を振る舞うことで好意を伝えようとしたのだ。すると、それまで祐子さんにとっては全くタイプじゃなかった英行さんに対する印象がガラリと変わった。

口下手な英行さんだったが得意料理の親子丼に込めた思いはしっかり伝わった

「今まで素敵なレストランに連れて行ってくれたり、自分の実績を話したりとアピールしてくる男性には慣れていたんですけど、こんなに不器用でピュアな人っていうのは初めてでした」(祐子さん)

この日から英行さんとの交際がスタートする。順調に愛を育んだ2人は翌年、結婚。それを機に英行さんは「や満登」4代目の社長に就任した。祐子さんも会社を後進に任せ女将として働くことになった。

ところが、そこには祐子さんが想像だにしていなかった事態が待ち受けていた。

嫁いでビックリ!老舗割烹は大赤字だった! 

4代目の女将として、お店に出た祐子さんだったが、なんと、3日に1度はお客さんがまったく来ない。お客さんがいないときは義父・孝行さんを真ん中に従業員が円を描くように囲み、お茶や酒を飲みながら話をしている。この不思議な光景に、祐子さんは違和感を覚えるばかりだった。

1年の交際を経てゴールインした後に思わぬ展開が待ち受けていた

しかも、たまにお客さんがたくさん入ったかと思うと、機嫌を良くした義父が売り上げのことも考えず、奢ってしまうことも。さすがにお店の経営に疑問を持った祐子さんが、「や満登」の経理書類を調べてみると、ほとんど仕事がないはずの従業員の時給が2400円だということがわかった。

驚いた裕子さんが事情を義父・孝行さんに聞いてみると…

「そりゃ、30年働いてもらってるんだから、当たり前じゃないか!」(孝行さん)

これまた、会長の孝行さんが独断で時給を上げていた。聞けば、毎年昇給させていき、長い年月をかけ今の金額まで上がったのだという。当然、経営は苦しくなり、なんと年間の赤字は5000万円にも上っていた。

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