(このひとに5つの質問)川戸義晴 ダイエー会長
イオンとの資本業務提携を発表した後も、売り上げの低迷が続くダイエー。提携は実を結ぶのか。イオンからダイエー会長に転じた川戸義晴氏が、再建の道筋を語った。(『週刊東洋経済』9月1日号より)
私は丸腰で来た 「イオン化」はしない
1 ダイエー会長に就任して3カ月。現場を回った感想は?
時代の流れを痛感した。かつてのダイエーは業界ナンバーワン。しかし、今では古い店舗が多い。業界での位置づけも大きく変わった。
1970年代後半、私がジャスコの関西の店にいたとき、ダイエーをよく研究した。当時いちばんダイエーの店に行ったのは私だと思う。そのとき、感心したのが、ダイエー社員の執念。その執念を呼び起こすことが私の仕事だ。
現場の従業員はとても一生懸命。これまでは経営者が変わるたびにリストラが行われた。しかし今回、同業のイオンが来たことで、(雇用面の)安心感があると思う。従来は営業に遠い経営陣も多かったが、現場にうるさい人が来た、今までとは違う、とも思い始めたんじゃないか。
2 既存店は上期約4%減と低迷が続く。どう立て直しますか。
直営208店中156店を回ったが、立地のよい店が多い。問題は立地を生かした商売になっていないことだ。
小売業の原点は、地域のお客にいかに役立つか。それは現場がいちばんよく知っている。これまでダイエーは本部主導の改装を行ってきたが、それでは十分な効果は出ない。
今後は私が現場に入って、社員やパートの意見を聞きながら進めたい。ある店を決め、すでに改装を実行し始めている。来春には明確な形で見本を見せたい。地域の五つの販売本部に1店ずつモデル店を作る。そうすれば、改装のスピードも上がるだろう。
3 総合スーパーとして食品だけでなく衣料も強化の方針です。
単に衣食住をそろえても通用しない。重要なのは、購買頻度の高い商品をいかに集めるか。分野別に縦割りとなるのが、総合スーパーの悪いところ。縦割りを横割りに変えていきたい。
4 イオンには一部で提携の遅れを懸念する声もあります。
提携はダイエー主体で進める必要がある。イオンのペースで進むわけではない。
私はスタッフも連れずに、丸腰で来た。ダイエーを変えるのは、従業員自身。「やらされた」という思いでは絶対によくならない。私はダイエーを「イオン化」するつもりはない。ダイエーをダイエーとして再建する必要がある。
8月にイオンは商品調達などグループ共通の機能会社を作
った。ダイエーからも社員が出向する。それをきっかけに提携は進むのではないか。
5 株価はイオンの取得時と比べ半値近くに下落しています。
負の遺産の処理を終え、営業体質をどう変えるかが問われている。今年、ダイエーは創立50周年を迎える。振り返って、今年がターニングポイントだったと評価されるようにしたい。
(書き手:並木厚憲 撮影:梅谷秀司)
かわと・よしはる
1943年生まれ。66年岡田屋(現イオン)入社、2000年からイオンモール社長としてグループのSC戦略を牽引。06年イオン取締役(現任)、07年5月ダイエー会長就任。自他ともに認める「現場型」。
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