大塚家具、「お家騒動」より深刻な本業の不振 現金減に重要事象、店舗縮小で乗り切れるか

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ただ、コミットメントラインには財務制限条項がある。具体的な内容は明記されていないが、このまま赤字が続けば、どこかの時点で抵触することは確実だ。

大手信用調査会社・帝国データバンク東京支社情報部の山口亮氏は「コミットメントラインを設けることで運転資金の確保は当面できる。だが、本業の赤字を解消できなければ根本的な解決にはならない」と指摘する。

大塚家具も手をこまぬいているわけではない。今年6月に福岡ショールームを2フロアから1フロアへ減床したが、来店客数や接客件数、成約件数にマイナスの影響が見られなかった。そのため従来の巨艦店戦略を転換し、店舗規模縮小による固定費の削減を進めていく方針だ。

今年から来年にかけて総店舗数の約半数に当たる全国の10店舗で、過剰面積の縮小や物流センターの効率化を進めることで賃借料の低減を図る。

大型店舗は面積縮小し、固定費削減

ゆりかもめの国際展示場正門駅から直結している有明ショールームはTFTビルの3~5階で展開する大型店。TFTビル2階にあった展示スペースは現在すでに撤去されている(2017年2月、記者撮影)

すでに大型ショールームと本社がある有明では、店舗の規模を縮小し5階の店舗の一部があった所に6階の本社が移転。空いたフロアはすでに貸主に返還している。

2016年9月に開店した南船橋店は4000平方メートルの中型店にもかかわらず、2万平米の有明ショールームの売り上げ上位8割の品ぞろえを実現できているため、減床しても品ぞろえに大きな影響はないという。

これらの店舗規模適正化を前倒しで実施することに伴い、事業構造改善引当金を特別損失として19億円計上する。来2018年12月期以降の収益構造の改善を図る方針だ。

ただ、赤字が続けばこうした施策も台なしになる。株主への配当も、前2016年度の1株当たり80円よりは減らし、今期は40円で実施する方針だ。会社側は「投資と配当のバランスに安定配当の考え方も加味して、現時点では配当予想は40円を据え置いた」と説明する。

減配によって、社外流出する現金は14億円から7億円に減るが、今の大塚家具にとっては決して少ない金額ではない。はたして、大塚家具はこの苦境を乗り切れるか。瀬戸際は今も続いている。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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