欧州に旅行する日本人が驚く人気地の超混雑 人口4000人の村に年250万人が押し寄せる

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イタリア北西部、地中海沿いに位置する中世から続く世界遺産の村、チンクエテッレ。要塞都市として生まれたこの村は1000年もの間、陸路がなく船のみが往来し、人々の生活が育まれてきた。岸壁に張り付くように点在する5つの漁村には、カラフルな家屋が立ち並び、訪れる観光客を魅了している。

今、その美しい村が揺れている。

世界遺産にも登録されているチンクエテッレ国立公園。断崖絶壁の村が人々を魅了する(写真:筆者撮影)

静かな村に年間250万人以上の観光客が押し寄せる

人口約4000人の静かな村に、年間250万人以上の観光客が押し寄せて、そこで生活を営む住民の通り道は大混雑、車ならぬ歩行者の渋滞が起きているのだという。

チンクエテッレ国立公園を走る鉄道の駅。ホームは世界中からの観光客でごった返す(写真:筆者撮影)

筆者も、今年6月末に別の取材で現地に向かった際、まだ夏のハイシーズンを迎えていないにもかかわらず、山手線の通勤ラッシュかと見紛うほどホームが大混雑していたことに驚いた。ドアからぎゅうぎゅうに押し込まれ、乗り切れなかった乗客はため息をつきながら次の電車を待つ――。まるで日本の朝の通勤ラッシュのような光景が、イタリアの静かな村で繰り広げられていた。

日帰り、もしくはほんの数日間だけ滞在する観光客ならまだこの混雑も耐えられるだろう。しかし、そこにずっと暮らし続ける住民にとっては、日々の生活に多大なストレスを与える大問題なのである。ちょうど取材に訪れた日にも、はるばるアメリカから10人ほどの大型テレビクルーが大掛かりな撮影を行っていた。旅行番組のチンクエテッレ特集を大々的に組むのだという。こうしてメディアで注目されることでまた、旅行者は増えていくのだろう。

ようやく来た列車に乗ろうと駆けつける乗客たち。乗り切れず次の列車を待つこともざらだ(写真:筆者撮影)
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