なぜ「TX」でトラブルや不祥事が相次ぐのか 「安全なはず」のつくばエクスプレスに何が?

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売上高は大手私鉄並みの規模になったTX。だが、社内体制や社員の安全意識に課題がある(撮影:大澤 誠)

首都圏新都市鉄道の2016年度の鉄道事業売上高432億円は相模鉄道(330億円)や阪神電気鉄道(353億円)を上回り、大手私鉄並みの規模だ。

一方、同社にはTXの建設資金として約7000億円の負債があり、約200億円が毎年返済に消える計算だ。経営は決して楽とはいえない。

人員を増やす考えはないかという本誌の問いに対して、「繁忙な時間帯はあるが、現状の人員で対応可能」と、会社側は回答する。

社員の安全意識低下も懸念

企業風土にも問題がありそうだ。数年前まで同社に勤めていた元社員は「勤務中に携帯電話をいじっている社員が何人もいた」と証言。実際、昨年12月には勤務中に駅員が私有携帯からSNSに書き込みを行っていたことが発覚するなど、モラル低下が疑われる。

TXは茨城県など沿線自治体の出資によって第三セクター方式で設立された。設立当初は西武鉄道や東京地下鉄(東京メトロ)などの鉄道各社からの出向者や転職組に支えられていた。

前出のTX社員は「西武からの出向者が各部署で目を光らせていた」と当時を振り返る。出向者は事あるごとに「西武ではこうやっている」と話し、“西武流”が職場に規律をもたらしていた。

だが、近年は西武からの出向は減り、逆に畑違いの業界からの中途採用や新卒採用が増えている。その過程で、組織のタガが緩み始めたとも考えられる。

元社員は「ホームドアがあるので人身事故が起きない。客の命を預かる意識が希薄かもしれない」と話す。

ただ、ホームドアがあるから人身事故が起きないと考えるのは早計だ。実際、TXでは昨年7月に乗客がホームドアを乗り越えようとした事案が発生している。

設備を過信し、社員の安全意識が低いとすれば問題だ。安全を最終的に担うのは鉄道会社の社員一人ひとり。実効性のある対策がTXに求められる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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