高くたって欲しい「冷蔵庫」の知られざる進化 国内ブランドが存在感、新製品で需要深掘り
省エネ性能を前面に押し出すのが三菱電機だ。
2008年のエコポイントや2011年の東日本大震災の直後は、省エネがもっとも重視された。現在では「省エネは当然取り組んでいるが、当たり前すぎて宣伝文句にならない」(メーカー担当者)という声がある中で、三菱電機 静岡製造所の足達威則・冷蔵庫製造部長は「電気代についてはまだまだ改善余地がある」と強調する。
今年の新製品では、500リットルを超えるモデルで前年モデル比7%改善を実現した。「7%は大きな改善だと思っている」(同)。
三菱はまた、野菜室において汚れが付きにくく取り外しが容易なトレイを採用。野菜室の掃除がしやすい工夫は前年のパナソニックも取り入れていたが、最上位機種のみの採用だった。三菱は全機種に展開することで違いを打ち出す。
春と夏に需要のヤマ
実のところ、「おいしさ」「同じサイズでの大容量化」「省エネ」は各社とも取り組んでおり、圧倒的な差はない。それぞれが今の消費者に響くと考えるポイントの違いが新製品の特徴につながっている。
冷蔵庫商戦は3、4月と7、8月という年間2回のヤマがある。春は新生活を前にした引っ越し需要で、単身世帯向けの中小型の新規購入が多い。
夏場はコンプレッサーへの負荷が高く故障が増えること、壊れなくても”冷え”の悪さを感じやすくことなどから、家族向けの大型機種の買い替えが増える。
冷蔵庫は「90%以上は買い替え需要」(三菱電機 静岡製作所の飯塚敏之・冷蔵庫営業統括部長)という超成熟家電。販売台数は年400万台前半が目安だ。
しかし、2009年5月から2011年3月末までエコポイント制度、2014年4月の消費増税を前にした駆け込み需要があったことで、その反動減で2015年以降は400万台割れが続いていた。
「400万台割れ」は1980年代までさかのぼる低水準。それをカバーしているのが、平均単価だ。2014年には10万円を突破した平均単価は、昨年は過去最高水準まで上昇した。
単価上昇の要因の一つは、大容量モデルの増加だ。「400リットル以上の大型機種は全体の45%前後。ただ、400リットル以上の中でも500リットル以上の超大容量機種が主流になっている」(パナソニックの太田課長)
核家族化の進行で世帯人数は増えていないものの、共働き世帯の増加で週末の買いだめ、作り置きに対応できる大容量冷蔵庫の需要が高まっているためだ。
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