中国の動画配信サイト「ビリビリ動画」の正体 年に1度の祭典に行ってみてわかったこと
私が見学した時には、アイドルオタクたちが無数のサイリウムを持って(爪のようにサイリウムを持つため、バルログと言うらしい)いわゆる"オタ芸"を披露していた。応援する相手がいないのにひたすらオタ芸を披露するさまはやや異様ではあったが、会場、そして配信サイト上でも大盛り上がりとなった(各ブースやライブの模様はすべてビリビリ動画で配信された)。
日本のコミケ(コミックマーケット)やアイドル・イベントのような一般ユーザーが積極的に関わることで楽しみを見いだすというスタイルは、従来の中国では主流ではなかった。かつては制作者と消費者の間には大きな壁があったのだが、新世代の中国人たちは新たな楽しみ方を受け入れているようだ。
日本的文脈を受け継いだ中国発「二次元」コンテンツへ
ビリビリ動画が日本文化の影響を色濃く受けていることがおわかりいただけただろうか。ビリビリワールドの会場には他にも、コミケ名物の"自宅警備員や"JOJOのコスプレをしている人がおり、さらには中国でも人気の日本のスマホゲーム「Fate/Grand Order」のブースがあるなど一目瞭然だった。
とはいえ、ビリビリ動画には現在、中国人ユーザーによる「踊ってみた」「歌ってみた」(一般ユーザーが人気の曲を踊った/歌った動画をアップすること)や料理動画、ペット動画などもあり、ジャンルは拡散しつつある。ビリビリ動画によると、2016年の調査では全アップロード動画のうち68%はユーザー独自コンテンツだという。
もはやビリビリ動画は日本アニメを見るためだけのサイトではないわけだ。ビリビリ動画の陳睿董事長によると、日本アニメ・マンガは今も主流ジャンルではあるものの、ビリビリ動画上での再生回数だけを見れば中国国産アニメが上回っているという。
ビリビリ動画はたんに日本アニメの正規配信権を購入するだけではなく、2014年末には日本支社を設立。2015年以来、日本で21作品に出資している。うち4作品は制作委員会の幹事会社としての参加だ。現在の日本アニメ業界の好調は海外市場が牽引する部分が強く、ビリビリ動画もその一角を担ってきた。
それにもかかわらず、中国のコアなアニメファンからは子供向けと一蹴されている中国国産アニメのほうが再生回数は上だというのだ。