48歳振付師がホームレスと踊り続ける理由 路上生活で生まれた表現、10周年ツアー敢行
「一緒に踊ったらわかる。どんな人生かはこちらからは聞きません」というアオキさん。私は練習に伺った際、メンバーに差し支えない範囲でこれまでのことを聞きました。
病気で失職、家庭不和・ダンスで健康とやりがい
50代のヨコウチさんは、2009年に加入。専門学校を卒業後、しばらくは接客の仕事をしていましたが、10年ぐらい前、メニエール病になり働きにくくなりました。
「大阪のシェルターに入ったり、住み込みの新聞配達で働いたり。どうにもできなくなり、自立支援のための寮に入りたいと申請しましたが空きがなくて。ビッグイシューの事務所に行ったときに、ソケリッサを知りました。初めは参加するつもりはありませんでした。アオキさんが芸能界で仕事しているプロのダンサーと聞き、当時好きだったバンドに会えるかと思って参加しました」
その後、寮には入れましたが、仕事が見つからず出なければならなくなり、NPOに相談して生活保護を受けました。今はアパートを借りてパートの仕事をしています。
ソケリッサの練習に初めて参加したとき、アオキさんに出されたお題は「赤鬼の舌 大やけど」。大声を出して動いたところ、ほめられて嬉しかったそうです。2010年、お客さんの前で初めて、踊りました。
「踊りになったかはわかりませんが、関西人のノリの良さが生かせて楽しい。公演では照明や音響などスタッフの働きがわかりますし、お客さんの反応を見てやりがいを感じます」とヨコウチさん。「ネガティブな反応は感じません。お客さんは温かく、よかったよと声をかけてくれます」
ヨコウチさんは「ソケリッサは人生の糧でよりどころ」といいます。大事な役割があったのに、本番を前に来なくなってしまう人もいました。「フェードアウトするのも、その人の人生だから」。去る者追わずのスタンスで、メンバー同志が親しく付き合うわけではありませんが、練習は張り合いになります。ストレスも減り、メニエール病は落ち着いているそうです。
最年長のコイソさんは69歳。2012年から参加しています。ビッグイシューの販売員をやっていたとき、仲間から「ソケリッサの練習はストレッチもあるし、体にいい」と聞いて知りました。販売員は合わせて8年ぐらい務め、路上生活の経験は10年以上あるそうです。