キヤノン復調、なぜ既存事業は立ち直ったか 2度目の上方修正だが、巨額制裁金リスクも

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それでもカメラ事業の収益は改善している。要因の一つが、高級品シフトだ。コンデジはプレミアムモデルの「Gシリーズ」、一眼レフはハイアマチュア(上級者)向けの製品など、高単価品の販売が好調だった。

もう一つの要因が、ミラーレスカメラの伸長だ。ミラーレスはデジカメで唯一の成長市場。2017年の世界市場は前年比14.9%増の401万台へ増加する見通し(テクノ・システム・リサーチ調べ)。キヤノンはここで存在感を高めている。

「EOS M6」(右)はミラーレスの代表機に。「EOS 9000D」は一眼レフの入門機として投入した(撮影:尾形文繁)

中でも好調なのが、今年4月に投入した小型ミラーレス「EOS M6」。小型軽量と高画質を両立した点が消費者に受け、買いかえ需要を取り込んだ。

2017年1~6月、キヤノンはミラーレス全体で販売台数を約70%以上増やした。その結果、世界のミラーレス市場におけるキヤノンのシェアは、テクノ・システム・リサーチの予測で今年22.4%(前年16.3%)に高まる見込みだ。カメラ市場全体が厳しい中でも、伸びる分野でしっかり成果を挙げている。

立ちはだかる欧州委員会

そのキヤノンに立ちはだかるのが、欧州連合(EU)の政策機関である欧州委員会だ。欧州委員会は7月6日、キヤノンが昨年末に完了した東芝メディカルシステムズの買収スキームについて、「欧州委員会からの承認を確実にする前に買収した疑いがある」と警告した。

現在審議中だが、制裁金は最大で連結売上高の10%に上る。キヤノンの2016年の売上高は約3兆4000億円なので、制裁金は3400億円と超高額となる可能性がある。これまで現実に10%もの制裁金が課されたケースはないと見られているが、同社にとって大きなリスク要因であることは間違いない。

キヤノンはこの件について具体的な言及を避けており、今回の業績見通しにもその影響は折り込んでいない。ここをクリアして初めて、キヤノンは本当の意味で回復したということになりそうだ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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