安倍首相は秘蔵っ子の稲田防衛相を斬れるか

「見え透いた芝居」は政権への不信を増幅

こうした稲田氏の対応について、野党側は政府に真相解明を迫るとともに、これまでの稲田氏のさまざまな"問題発言"なども絡めて、「首相は(稲田氏を)即時罷免とすべきだ」(蓮舫民進党代表)と攻勢を強めている。その一方で、自民党内からも「稲田氏を早く更迭しないと、政権全体の問題になる」(自民幹部)との声が聞こえてくる。

稲田氏は自民党が歴史的惨敗を喫した東京都議選(7月2日投開票)で、自民公認候補を応援する際「防衛省、自衛隊としてもお願いしたい」との憲法違反ともとれる発言をして集中砲火を浴びたばかり。与党幹部の間では「あの時すぐ更迭していれば、こんなことにはならなかった」(公明党)との恨み節も出る。しかし、菅義偉官房長官は21日の会見でも辞任論を否定し、稲田防衛相の下で特別防衛監察をまとめて公表する方針を示した。

首相や菅氏が稲田氏を擁護するのは、同氏が「首相の秘蔵っ子」とみられているため「罷免に追い込まれれば、首相の任命責任がより厳しく問われかねない」(官邸筋)との懸念がある。しかも、首相は支持率急落などの窮地から脱するための自民党役員・内閣改造人事を8月3日に予定しており、「人事直前に更迭しても、誰を後任に据えるかも含め問題がより複雑化するだけ」(自民幹部)ということもあって首相らも踏ん切りがつかないのが実態とみられる。

裏目に出た首相の親心

稲田氏は衆院当選4回。2005年夏の小泉純一郎首相(当時)による「郵政解散」の際、当時自民党幹事長代理だった安倍首相に口説かれて「刺客」として立候補し初当選した。その後、自民党政権が崩壊した2009年も含め、3回の衆院選で当選を続け、2012年12月の第2次安倍政権発足以来、内閣府特命相(規制改革担当)、党政調会長などの要職に抜擢され、昨年8月の改造人事では小池百合子現東京都知事に次ぐ2人目の女性防衛相に起用された。

稲田氏は法律家で政策通を自称するが、防衛政務官も副大臣も未経験で、安保・防衛分野は素人だった。それでも首相が起用したのは「将来のために、安保・防衛問題を勉強させるため」(自民幹部)だったとされる。

しかし、この首相の親心が「裏目に出た」(自民長老)のは否定しようがない。トラブルは昨年暮れから続く自衛隊日報隠蔽問題だけではない。通常国会前半で大騒動となった「森友学園疑惑」でも、籠池泰典前理事長の代理人を務めていたかどうかを国会で問われて明確な口調で「否定」したが、日を置かずに籠池氏関連訴訟の法廷記録に代理人として記載されていたことが発覚。発言訂正と謝罪に追い込まれた。さらに、都議選での「憲法違反発言」も積み重なったことで、与党内からは「首相の秘蔵っ子ではなく、安倍政権の火薬庫だ」(公明党幹部)との厳しい声が噴出していた。

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