安倍首相は秘蔵っ子の稲田防衛相を斬れるか 「見え透いた芝居」は政権への不信を増幅
今回の「日報隠蔽了承」疑惑の陰には、防衛省内の制服組(自衛官)と背広組(防衛省職員=文官=)の確執があるとされ、「特別監察での背広組の対応に不満を持つ陸自の制服組が、内部情報をマスコミにリークした」(政府筋)との見方もある。
ただ、自衛隊という「実力組織」の暴走・暴発を阻止するのがシビリアンコントロール(文民統制)だ。職業軍人でない文民(文官)が、「軍隊」組織に対して最高の指揮権を持つことで、軍の政治への介入を抑止し、民主政治を守るという大原則だ。「陸自が文官の命令に反発したとすれば、まさに文民統制のトップとなる防衛相の責任」(防衛相経験者)であることは論を待たない。
首相はお友達だけ守り、ほかは切り捨てるのか
4月下旬に、東日本大震災について「東北でよかった」と失言した今村雅弘前復興相は、首相の「即断即決」で更迭された。今回の「隠蔽疑惑」も含め一連の稲田氏の言動が安倍政権に与えてきたダメージは「今村氏と比較にならないくらい大きい」(自民長老)とされる。にもかかわらず、首相が擁護を続ければ「お友達だけを守って、それ以外は冷徹に切るという首相の体質」(自民若手)を一段と際立たせる結果にもなりかねない。
通常国会閉幕直後に急落した内閣支持率はその後も下げ止まらず、「政権の危険水域」という30%割れの数字が現実となっている。だからこそ、首相は「8月人事」で態勢立て直しを図ろうとしているのだ。
永田町では、菅官房長官ら官邸サイドが稲田氏自身を特別防衛監察の対象とし、報告取りまとめと公表を28日か31日に先送りさせたのは、「24、25両日の衆参閉会中審査で稲田氏が追及されても、特別防衛監察を理由に具体的な答弁を避けて逃げ切るための策略」(民進党幹部)との見方も広がっている。「こんなドタバタ劇を7月末まで続ければ、人事による態勢立て直しさえ難しくなる」(自民長老)との指摘もある。
「水に落ちた犬はさらに打たれる」という"永田町の法則"からすれば、「このまま放置すれば、マスコミも含めた稲田氏への攻撃はさらに強まり、文科省と同様に情報リークも止まらない状況になる」(自民幹部)可能性も否定できない。首相周辺では「稲田氏が特別防衛監察の公表時に責任を取って辞任する」とのシナリオもささやかれているが、「そんな見え透いた芝居は、安倍政権への国民の不信を増幅させるだけ」(幹事長経験者)との声もある。どうやらこの週末以降、「首相がどう決断するかが、安倍政権の前途を左右する」(同)ことは間違いなさそうだ。
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