エプソン、28万円の高価格時計に込めた勝算 なぜ今、高機能アナログ時計を投入するのか

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エプソン自身も、2012年からスポーツウォッチを、2014年から電子ペーパーを使った時計を販売。また経営難に陥った機械式時計で有名なオリエント時計を2009年に完全子会社化、今年4月からは吸収合併し、販売のテコ入れに乗り出している。

今回、エプソンが発表した時計はさまざまなセンサーや機能を搭載したソーラー発電式時計。搭載機能に違いはあれど、外観や価格帯はセイコーの「アストロン」やシチズンの「アテッサ」に近い。

スマートウォッチとは一線を画す

エプソンにとっては本格的な自社ブランドとなるTRUME。はたして消費者の支持は得られるのか(写真:セイコーエプソン)

すでに機械式のオリエント、自社ブランドのウエアラブル時計を擁する中で、今回はOEM提供で培った技術や、オリエントの販売網などを生かせる高機能アナログ時計を投入し、製品ラインナップに幅を持たせた格好だ。

エプソンの碓井社長は「新しいブランドを作るにあたって、人生をつなぎ世代を超えて愛される機器を目指した。そのため、ファーストモデルではスマートフォンの周辺機器であるスマートウォッチとは一線を画して、先端技術をアナログウォッチの形で包んだ」と話す。

足元の腕時計市場は中国人の買い控えによって、スイスや日本勢は苦戦が続く。とはいえ、「腕時計市場は安定的に成長してきた。今後も(世界的な)人口増加や生活水準の向上で、安定的な成長が期待できる」(井上茂樹ウエアラブル機器事業部長)。

エプソンは腕時計そのものの販売金額は公表してないが、ムーブメント外販を含むウエアラブル機器事業の売上高は、2016年度に507億円で赤字だったもよう。TRUMEの販売目標や、どういった分野を重点的に伸ばすかといった点に明言せず、「2025年度にウエアラブル機器事業で売上高1000億円以上を目指す」(碓井社長)というにとどめた。

日本勢ではセイコーやシチズン、カシオといった上位3社の時計事業の売上高は1300億円から1700億円程度。業界の四男坊とされたオリエント時計は吸収合併前の2015年度の売上高が71億円と規模は2ケタ小さい。

またゼロから新ブランドを立ち上げるということは時間も資金も必要になってくる。はたして同社の考えるように、消費者は"エプソンらしさ"を支持してくれるのか。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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