大磯プリンス「通年リゾートへ脱皮」の舞台裏 想像以上の「ラグジュアリー空間」に変わった

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プリンスホテル大磯・鎌倉地区総支配人の伊丹信一郎氏(筆者撮影)

最後に、温泉・スパ施設のターゲットやインバウンド対応など、今後の集客戦略について、伊丹氏に質問した。

――通年型リゾートを目指すうえでの目玉となるのはもちろん、新規オープンした温泉・スパ施設だと思うが、大磯ロングビーチがオフになる秋以降、どのような集客を考えているのか。

スパに関しては、やはり女性グループが中心になる。OLのグループ、女子会などはもちろん、1010平方メートルの宴会場もあることから、都心ではできないインセンティブ旅行をはじめとする、MICE(マイス=ビジネスイベント)の需要を見込んでいる。

また、すでに出てきている傾向だが、温泉が整備されたことにより、今まで2世代での宿泊だったのが3世代になり、さらに、おじいちゃん、おばあちゃんがお孫さんを連れて訪れるというパターンもある。プールのみでは、シニア世代の取り込みは難しかったため、これは、まさに温泉効果だ。

さらに、インバウンドの割合は、現状、宿泊の8%程度だが、これを10%台には持っていきたい。

――インバウンドに関しては、特に欧米人は、2~3週間程度バカンスを取り、1カ所ないし周辺にゆっくり滞在するスタイルが好まれるようだが、そうした長期滞在の要望に応える宿泊プランや、エンターテインメントなどの用意はあるのか。

夕食時にレストランでのフラショーを実施しているほか、保養地としての歴史もある大磯の温暖な気候から、“健康”にフォーカスした“ウェルネスリゾート”を目指し、年間を通じてプログラムを組んでいく予定だ。具体的には、現在、早朝の芝生の上でヨガを行う“MORNING GARDEN YOGA”を実施している。

これが即、インバウンド増につながるとは思わないが、大磯に行ったら、こんな取り組みをやっていたということがクチコミで広がれば、滞在先を選択するうえでの誘因になる可能性はあるのではないか。

また、当ホテルには、テニス、ゴルフ、フットサル、ボウリングをはじめ、さまざまな施設があるので、これらを複合的に使っていただければと思う。

――大磯といえば、この春オープンした、吉田茂元首相の邸宅である「旧吉田茂邸」が話題になり、大磯プリンスホテルも、生前、吉田茂が好んだ大磯の味覚を盛り込んだランチメニュー「旧吉田茂邸ランチ」を7月7日まで提供するなどしたが、今後、旧吉田茂邸と連携した取り組みはないのか。

旧吉田茂邸見学と旧吉田茂邸ランチをセットにしたバスツアーは好評で、今後も継続したい。バスツアーは日帰りツアーがまだまだ多いが、名古屋発ツアーなどで、1泊ツアーも出てきており、今後も増やしていきたい。

明治維新150周年で大磯が脚光を浴びる?

なお、温泉・スパ施設「THERMAL SPA S.WAVE」は8月末まではホテル宿泊者およびランチセットなど各種プラン利用者専用で、一般客の利用が可能になるのは、9月1日からだという。

さて、来年は明治維新150周年を迎え、現在、国を中心に関連施策の検討が進められているが、伊藤博文、山縣有朋をはじめ、明治の元勲たちが居住ないし別荘を構えた大磯にスポットライトが当たるのは間違いないだろう。

こうした観光需要も見込まれる中、「宿泊」にどう結び付けていくかが、今後の課題となるのではないか。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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