「学力」で勝る日本がフランスの教育に学ぶ事

平均的に優秀な日本人は果たして幸せか?

最近では72カ国が参加した2015年。フランスは科学的リテラシー26位、読解力19位、数学的リテラシー26位でした。科学も数学も上位の3分の1に入っていません。成績はパッとしていないと言っていいでしょう。ちなみにアメリカは科学的リテラシー25位、読解力24位、数学的リテラシー40位でさらにパッとしません。

一時ゆとり世代で順位を後退させていた日本は、リベンジを果たして上位にカムバックしました。科学的リテラシーはシンガポールに次いで2位、読解力8位、数学的リテラシーは5位でシンガポール、香港、マカオ、台湾に次ぎました。台湾を除けばみなアジア新興の都市国家ばかりですから、日本の成績は立派なものです。

パリの友人が「そもそも受験制度が違うのだから、○×や択一式に穴埋め問題で訓練されている日本の子どもたちは〈正解がない教育〉を受けているフランスの子どもたちより有利なのよ」とささやきましたが、それはちょっと言い逃れのよう。

問題文はそれぞれの国語で書かれているのは当然としても、どこかの国が有利になるようなテストが実施されるはずもありません。それこそPISAを主催するOECDの本部はフランスにあるのです。地元に不利なことを故意にするほどのエスプリがあったら、私はもっと尊敬しちゃいますけどね。

少なくともPISAの結果は、各国における15歳の学習到達度の客観的なデータであることは否定しようがありません。

15歳時点の学力に、いったい何の意味がある?

ただ、15歳の国際平均学力に、いったい何の意味があるのでしょう。将棋の藤井聡太四段は別格なのです。日本人の15歳が賢かったとして、大人になった日本人の頭がいいとは必ずしも言えません。「五つで神童、十で秀才、二十過ぎればただの人」です。統計をだすまでもなく、私の“経験値”から言えます。日本人にギフテッド(高度に能力が高い人)はめったにいません。

一般的に、人の能力が花開くのは二十過ぎです。ましてや国の土台を支える年齢となれば、成熟したオトナの領域です。そうなれば、国民の底力が学力テストのような尺度で測れるものではないことは明らかです。GDPの多寡でもなければ、経済成長率でもない。国民幸福度調査というのもありますが、それだけでもないと思います。私はその国に行って見る人々の顔色や歩き方から感じる「気風」のようなものと思うのですが、これも断定できるまでには至っていません。

日本は小さい国土、稠密(ちゅうみつ)な人口、乏しい資源といった、多くのマイナス要素がある中で、生まれた途端から追いつけ追い越せを強いられてきました。開国して近代になると、富国強兵で戦争はするし工業化もしなきゃならない。それ技術や、それ頭脳やと、国民は急かされ走らされてきたのです。

こうして、一芸に秀でるよりも、平均的に優秀であることが王道となり、協調性を強制されて同調圧力が社会の隅々まで浸透されてやってきたのです。その結果として引き起こされるイジメも子どもの自死も昔からあったでしょうが、それがようやく論じられるようになったのが昨今なのです。

ただ、いくら学力テストの成績がよくても、国民の生活は――こと子どもたちや女性たちは幸せだったのでしょうか。また、子どもや女性が幸せでなくて、男性たちだけが幸福であるなんてことはありません。良い大学に入れば優良企業にいけて、そうすれば人生安泰に過ごせる。そんな神話はすべて現実となったでしょうか? 私はそうは思わないのです。

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私は学生のころ、親や教師から「全国テストでは同点の中には何百人もいる。1点でもよくしなきゃ、たかが1点でも大変な違いなんだから」と叱咤激励され、それを疑うこともなく勉強してきました。ただ、今振り返って思うのは、1点2点になんの違いもない、そんなことに一喜一憂したことのバカらしさったらありません。

「平均学力が日本より劣っているだって。エ・アロール(それがどうした)?」。きっと、フランス人は皆そう言うでしょう。だからこそフランスはおもしろいのです。自分は自分、人は人です。

フランスは、ポピュリズムの嵐が襲った選挙戦でも、大勢にのまれることなく、共和国建国のポリシーを貫き通しました。何より、それぞれが自律的で、豊かな精神性を持ち、幸せでアムールのある人生のほうがセンシュアルですてきではないでしょうか。

ところで、2月には“(テロに狙われる)パリはもはやパリでなくなった”と言い放ったトランプ大統領が、7月14日のフランス革命記念日のパリ訪問では、手のひらを返したように、パリを“花の都”と絶賛し、離脱を唱えていた「パリ協定」さえ、絶対ではないこと示唆しました。マクロン大統領の戦術に懐柔されたのかもしれません。

“大統領こそ若造だけれど、フランスはアメリカのような若造の国ではない。我々は二枚舌ではない” 。大国を自認する風韻を見せつけた結果と言えるでしょう。

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