ライオンの曲がる歯ブラシは救世主となるか 事故防止の期待を受けて2.5倍売れている

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今年2月に発売された子ども用の「曲がる歯ブラシ」が大ヒットしている(記者撮影)

ライオンの「クリニカKid’sハブラシ」の販売が好調だ。同シリーズは今年2月にリニューアルし、前年の2.5倍のペースで売れているという。最大の特徴は、ハンドル部分がぐにゃりと横に曲がるところにある。歯磨き中の転倒など万が一の時に、側面方向にハンドルが曲がることで、口への負担が低減できるという。

クリニカKid’sが売れている背景には、子どもの歯ブラシ事故がある。東京都商品等安全対策協議会によると、都内で子どもの歯ブラシ事故で救急搬送に至ったケースが毎年40件前後発生している。

40件というと少ないように感じる。だが、歯ブラシの先端部分がのどに刺さってしまうなど重症を負い入院した例もある。東京都生活文化局の担当者は、「救急車で運ばれた事例は歯ブラシ事故の氷山の一角に過ぎない。歯ブラシを口にくわえたまま転倒しかけたケースなど、大事になりかけたケースが裏に隠されている」と話す。

注意喚起しても減らない

事故が多いのは1歳から3歳前半の子どもだ。「つかまり立ちなど、ちょうど子どもが自分で動き始めるようになる頃。子どもは転倒時に手が先にでないため、歯ブラシがのどに刺さってしまう」(都内の歯科医師)。

東京都は保育園や幼稚園などへ注意喚起してきたが、「なかなか減らない」(東京都生活文化局)。都は2016年7月に歯ブラシ事故の安全対策に関する協議会をスタートし、実態調査と対策の検討に乗り出した。

事故を予防する歯ブラシは安全具が付いていて、奥まで歯ブラシを入らないようになっているタイプなどが販売されている。だが、実態調査でその使用率は1割にとどまっていることがわかった。

事故防止歯ブラシの多くは500円以上と値段が高い。歯ブラシは買い替え頻度が高いため、購入をためらう家庭も少なくない。さらに、奥歯が磨きづらいため、歯垢を十分に落とせない。

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