調整局面に入った穀物価格の行方 天候とエタノール次第 波乱のトウモロコシ相場

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 「7月後半から8月上旬にかけての天候がキーになる」

伊藤忠商事でトウモロコシの買い付けを担当する飼料・穀物部長代理の高橋成夫氏は言う。

トウモロコシ価格は今年の6月に1ブッシェル7・5ドルの最高値を更新した。春先の長雨で種まきが遅れたうえに、6月にオハイオ州など米国中西部「コーンベルト」を洪水が襲った。トウモロコシの生産に影響が出る懸念から価格が急騰したのだ。

米国のトウモロコシは通常、7月前半から半ばに受粉期を迎える。だが、種まきの遅れと洪水の影響で今年は7月後半から8月上旬に受粉期がずれ込む。1週間しかない受粉期に熱波がぶつかれば、トウモロコシの収穫量は大きな打撃を受ける。半月の遅れで天候リスクが高くなることは間違いない。

トウモロコシ価格は受粉期の天候次第

現状、トウモロコシの価格は6ドル前後で調整局面にある。

トウモロコシは世界の生産の4割強、輸出の6割強を米国に依存している。当然、相場は米国の生産動向に大きく左右される。

7月に発表された米農務省需給報告では2008/09年度の米国トウモロコシ生産予想が117億1500万ブッシェルと6月時よりも2000万ブッシェルの減少となった。ただ、この数字は130億ブッシェル強となった前年度に次ぐ過去2番目でかなりの高水準である。

単位面積当たりの収穫(単収)予想は今年2月の予想から毎月のように下方修正され、前年度比1・8%減少となっている。ただ、種まきの遅れや洪水は織り込まれており、懸念されたより影響は軽微だ。

一方、植え付け前の3月上旬に調査した生産者のトウモロコシの作付け意向面積(8600万エーカー)よりも、6月末に発表された実際に生産者が作付けした面積(8733万エーカー)が拡大したことで、生産量の落ち込みは想定よりも小幅にとどまっている。

需要面では米国内の飼料用需要、輸出向けとも前年度より減少傾向にある。飼料用でトウモロコシと競合する小麦が世界的な大豊作で価格が低下したため、米国内外の飼料用需要を小麦に奪われているのだ。

それでも、エタノール向けのトウモロコシ需要が、06/07年度実績の21億ブッシェルから07/08年度(推定)29・5億ブッシェル、08/09年度(予想)39・5億ブッシェルと拡大基調にあるため、今年度の米国内の消費量は生産量を上回る見込み。ただ、7月の需給報告で07/08年度と08/09年度はそれぞれ0・5億ブッシェル下方修正されており、エタノールの勢いは鈍化している。

エタノールの生産に必要なトウモロコシ、天然ガスの価格の上昇にエタノールの価格上昇が追いついていない。そのため、エタノール事業者の採算が悪化、地域によっては赤字の事業者が出たり、新工場の計画が延期になったりしている。

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