「営業・接客系」の働き方はAI登場で変わるか レンジでチンするようにAIでデータ分析?

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人の仕事が、ヒューマンタッチな方向へ進化するのとは別に、新たな価値を生み出すための「仮説を立てる」領域に進化するパターンもあります。

AIは「データがなければただの箱」です。このAIに、どういった目的でどういったデータを分析させ、どういった結果を知りたいのかを考えるのはやはり人間です。

これまでも顧客情報管理(CRM)は、システムの中で実現されてきましたが、「データを入力する人」と「分析する人」が別部署であることも多く、残念ながら現場のスタッフがうまく活用して成果を上げるレベルに至ることは多くありませんでした。

しかし、AIの導入により、「現場スタッフ自身が、簡単にスピーディにデータ分析をする」ことが可能となるのです。

わずか3分程度、しかも自動で

アメリカのAIベンチャー企業データロボットが開発した「DataRobot(データロボット)」は、プログラミング知識がない普通のビジネスパーソンでも、エクセルを使う感覚でAIを扱えるようになるツールです。

大量のデータをデータロボットに読み込ませて、「何を分析したいのか」という目的を設定し、「開始ボタン」を押します。すると、過去のデータの傾向を統計分析した「予測モデル」をなんとわずか3分程度で「レンジでチン」するように自動で作ってくれるのです。

この活用例としては、たとえば、過去の顧客の契約受注データ・失注データを大量に学習させて予測モデルをつくり、その予測モデルにまだ未契約の新規の顧客データを何件か読み込ませます。すると、どの顧客が契約に至る「可能性」が高いかをこの予測モデルが示してくれ、これを活用することによって営業社員は限られた時間を有効活用することができるのです。

『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

今までは、予測モデルをつくることができるのは、データ分析に精通した一部の社員のみだったうえ、制作するのに数日から数週間かかっていました。しかし、データロボットなら、誰でも数分で最新のデータに基づいて何度でも予測モデルを作成することができます。まさに「考えて行動する」現場に進化していくのです。

上記はほんの一部ですが、AIは人間の仕事を脅かすものではなく、人をサポートしてくれるものだということがおわかりいただけたのではないでしょうか。しかし私は、「効率を上げる」だけがAI活用の目的になってはいけないと考えています。それはあくまでも手段です。そして、ただ休みが取れれば“働き方改革”が成功したと考えるべきではないと思っています。人間がロボット的な働き方から解放され、より人間らしいやりがいのある仕事に取り組むことで、働く人々の環境が整うと思うからです。

AIを活用して効率を上げることでどんな会社にしたいのか? 社員がどういう働き方ができるようにしたいのか? 経営者の方にはそれらをしっかり考えビジョンを作ってほしいと思います。

(構成:山岸美夕紀)

藤野 貴教 働きごこち研究所 代表取締役、ワークスタイルクリエイター

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ふじの たかのり / Takanori Fujino

組織開発・人材育成コンサルタント。グロービス経営大学院MBA(成績優秀修了者)。人工知能学会会員。外資系コンサルティング会社、人事コンサルティング会社を経て、東証マザーズ上場のIT企業において、人事採用・組織活性化・新規事業開発・営業マネジャーを経験。2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「ニュートラルメソッド」を基に、「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援を実践中。2015年から現在の研究テーマは「人工知能の進化と働き方の変化」。研修やセミナーの受講者はのべ1万人を超える。2006年、27歳のときに東京を「卒業」。愛知県の田舎(西尾市幡豆町ハズフォルニア)で子育て中。家から海まで歩いて5分。職場までは1時間半。趣味はスタンディングアップパドル(SUP)と田んぼ。本書は、著者が「働き方」の専門家として、人工知能が進化する中で、いかに人間として幸せに働き、生きるかというヒントを提案した希望の書である。

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