「日本一貧乏な観光列車」が人気を集めるワケ 旅行会社のノウハウと鉄道好きの熱意が融合
しかし、参加者の反応は必ずしも芳しいものばかりでなく、積極的な反応をする人がいる一方で、ここにそんな魅力があるとは思えないという冷めた反応も見られたという。
このような反応は、決して珍しいものではない。全国どこでも新たなことを進めようとしたときに一様に見られる反応だ。地域で生まれ育った人は土地への愛着を人一倍もっているものの、そのよさは観光客が喜ぶようなものではないと考えるものだ。粘り強く交渉を続けた結果、徐々に前向きな反応が増えていき、沿線の人々の協力が得られるようになった。
車両は、国鉄時代に造られたキハ40形という中古車をJR北海道から9両譲受することになった。こちらも費用をかけられないものの、北海道が地域情報発信列車として3000万円の予算をつけて改造、2両の「ながまれ」号を準備してくれた。
改造といっても、観光列車専用車両を用意する余裕はないため、通常は他の車両と同様に通学輸送に使われる。そのため、観光列車として走るときだけ、車内で飲食ができるようにテーブルとヘッドレストを設置し、飾り付けできるような改造を施した。永山が言う「日本一貧乏な観光列車」の誕生だ。
旅行会社が企画販売する意義は?
ところで、鉄道会社ではなく旅行会社が観光列車を企画し販売する意義はどこにあるのだろうか。これに対する永山の答えは明白だった。
並行在来線として第三セクター鉄道を発足させるときは、限られた人数で諸手続きを済ませ、定期列車を安全運行させるだけで精いっぱいとなる。観光列車の企画立案から始めて告知をし、販売をするところまでは手が回らない。
その点、旅行会社が請け負えば、開業と同時に観光列車を走らせることができる。すると、開業ブームによってその存在をPRすることもできるし、なにより沿線の魅力を全国に発信できるのだという。そのために、永山はこの列車の円滑な運行を目的として、北海道オプショナルツアーズから接客対応が得意な社員の出向派遣もしているという。
永山の思いが詰まった「ながまれ海峡号」は、昨年ほぼ毎回満員だったという。それもそのはず、実際に乗ってみると、他の観光列車とはひと味もふた味も違う数々のアイデアが詰まった列車なのだ。
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