「よろしくお願いします」が英訳できない理由 相手方へも含めた以心伝心を物語る

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ネイティブの友人などに相談したところ、メールを送信する相手のとの関係によりますが、「敬具」の意味で「Sincerely」「Yours truly」「Regards」や気楽な結びの言葉として「Best wishes」(幸あれ)「Take care」(じゃあね)などがあると知りました。しかし、「Thank you」であればどんなときにも無難だということを聞いて以来、私の中では「Thank you」が「よろしくお願いします」の英訳だと自分に言い聞かせて使っていました。

訳せない理由

しかし、一見、英訳が簡単そうに見えるこの「よろしくお願いします」という言葉に、なぜここまで悩まなければならないのでしょうか。実は、それもそのはずなのです。なぜならば、元来英語にはひと言でさまざまな意味の役割を持つ日本語の「よろしくお願いします」のような表現がないのです。

英訳をする場合、「よろしくお願いします」を使うシチュエーションごとに、その言葉の意味を理解したうえで、英訳しなければなりません。つまり、その場面場面で自分が意図することを細かく明確にすることで、英訳が可能になるということです。

例えば、何かをお願いする時の「よろしくお願いします」は、依頼したことへの「よろしく」という気持ちを込めて「Thank you in advance」となります。また、初めて出会ったときの挨拶で使う場合は、「Nice to meet you」(はじめまして)となります。さらに、面接などをする際の挨拶として使う場合は、「Thank you for taking time to meet」(面接するお時間を作って頂きありがとうございます)などとなります。つまり、「よろしく」というものが何を指しているのかを明確にすることが重要になります。

しかし、私自身、時として何に「よろしくお願いします」といっているのか分からなくなることがあります。何か目的や意図がなくても、無意識に口にしてしまいますが、相手も特にそれに対して疑問を感じず、「こちらこそ、よろしくお願いします」と返答されることもあります。この場合は、一体お互いは「何」を「よろしく」と言っているのでしょうか。

ここで「よろしく」の意味を確認してみたいと思います。「よろしく」とは、漢字では「宜しく」と書き、主に「ちょうどよい具合に」「是非とも」を意味し、人に何かを依頼をする時や人に好意を伝えてもらう時(例、「よろしく伝えて下さい」)にも使います。

ここでも「何」を「よろしく」なのか明確ではありませんが、さまざまな「よろしく」の意味を深く掘り下げてみると、ある共通の目的に行き着きます。それは、「とりはからう(取り計らう)」ということです。つまり、物事がうまく運ぶように考えて処理をすることです。

これは特別な解釈ではなく、すでにご存知の方も多いと思います。しかし、普段から何気なくさまざまな場面で「よろしく」を口にするが故に、言葉が形骸化してしまっていて、気が付かなかったという方もおられるのではないでしょうか。

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